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71年前の古代ロマン<br>市指定文化財「切山古墳」の遺物を寄贈<br>当地古代史研究の一助に

71年前の古代ロマン
市指定文化財「切山古墳」の遺物を寄贈
当地古代史研究の一助に

投稿日時:2022年02月22日(火)

 戦後間もない1951年に境谷で、市内最古と言われる「切山古墳」が発見された。4世紀に当地で大きな勢力を持っていたとみられる人物が埋葬されていた石棺は現在、女布の城南会館に展示されているが、発見当時にその構造物の一部などを拾ったという女性が16日、所有する遺物一式を市に寄贈した。

 遺物を寄贈したのは大嵜由紀子さん(84)=伊佐津=。3歳の時に戦地で亡くなった父が生前、考古学の名門である早稲田大で発掘調査に参加していたことなどを伝聞し、少女時代から古代ロマンに心を揺さぶられることがあったという。
 1951年8月31日。「古墳から刀剣発掘」の朝刊記事を祖父から伝えられると、大嵜さんの好奇心が爆発した。記事によると、戦時中は海軍工廠のあった場所の土木工事で、「日雇い労働者が石棺を掘り当てた」とあった。現場が自宅から近かったことから、すぐに記事にある場所に赴いた。「暑い夏の日だった」と話す大嵜さんは、当時まだ中学2年生だった少女の行動力について、「ただ、好奇心が勝った」と振り返った。その日に持ち帰ったものは丁寧に箱詰めし、状況などを記した注意書きを貼り付けた。遺物はその後、長期間に渡って自宅で保管し続けられることになった。
 【府北部最古の組合式石棺】
 市指定文化財である切山古墳石棺は現在、女布の城南会館に設置されており、誰でも見ることが出来る。石棺は、境谷の丘陵上で出土。古墳時代前期中葉(4世紀中頃)のものであり、丹後半島東南部産とみられる6枚の凝灰岩板岩からなる組合式石棺。大王棺とされる長持型石棺の影響を受けたものとみられる。京都府北部では、最古の組合式石棺とされ、丹後地方における古墳成立の持つ意味を考える上で極めて高い価値を持っている。外寸は249㎝×96㎝×89㎝で内面には当時は貴重な朱が塗られ、鉄製武器類などが発見された。石棺はこれまで、南田辺の舞鶴公園や、旧郷土資料館、西舞鶴の旧市民会館での展示を経て、城南会館へ移設された。切山古墳は、「当時の日本海側地域の先進性を示す遺跡である」とされているが、発掘当時に出土した遺物は京都府の所有となっている。
 大嵜さんが保管していた遺物は、石棺の一部をはじめ、刀剣や被葬者の人骨の一部、石棺内部に塗られていた朱の塗料の一部と多岐にわたる。今回の寄贈を受けて、市文化振興課文化財係の松﨑健太さんは、「保存状態の良い多様な遺物なので、活用していきたい」と話した。
 持ち物を「断捨離」していく中で寄贈を思いついたという大嵜さんは、「今の技術で出来ること出来ないこと、色々あるとは思いますが、いずれもっと技術が発達した将来、『大昔にこの地で大きな勢力を持った人物が一体どのような人だったのか』ということが明らかになる可能性もあるかもしれません」と古代ロマンに思いを馳せていた。

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