1846年、海上安全など祈願し奉納 松尾寺・本堂の船絵馬修復が完了【舞鶴】
投稿日時:2005年05月13日(金)
西国二十九番札所の松尾寺(舞鶴市・松尾心空住職)の本堂に掛かっていた船絵馬の修復が完了し、このほど同寺に戻された。海上安全などを祈願して奉納された船絵馬だが、同寺のものは北前船11隻が描かれた大絵馬で、丹後では類例が少なく貴重。1846年(弘化3)に奉納され傷みがひどかったため、初めて修復に取り組んだ。近世の海に生きた人々の信仰の厚さを伝える歴史資料として、同寺は大切に保存していきたいとしている。同寺の船絵馬は、小浜の廻船問屋で船の所有者の清水源兵衛や、船頭の吉次郎らが奉納した。風をはらんで帆をはった長福丸など11隻の船と船上で働く船頭の姿を見ることができる。大阪の船絵馬師の杉本春乗清舟が描いた。大きさは縦82センチ、横183センチ。1、2隻の船を描いた船絵馬が一般的とされる。 年本堂内に掛けられていたが、護摩焚きの煤で船絵馬の紙の表面が黒ずんだり、一部はやにの艶も見られた。また、湿気と熱で紙がめくれ上がるなどして傷みが激しかった。そのため同寺の依頼を受けた京都市内の文化財修復の専門業者が、昨年6月から黒ずみを取り除くなど作業にあたっていた。11隻の船がはっきりと分かるようになった。その一方、この絵馬を調査した府立丹後郷土資料館(宮津市)は実物大の複製を作成。京都市の絵師らが昨年秋に完成させ、同館で展示している。北前船は近世中期から明治中期にかけて、大阪から瀬戸内を抜け、日本海を渡り北海道までの西回り航路に就航した。この付近では宮津や小浜などが寄港地。船頭が寄港地の神仏に海上安全を祈願したり、無事の帰港を感謝して奉納した。紙に絵を描いて杉板に糊付けし、幕末などに多く製作された。青葉山中腹にある松尾寺の本尊は馬頭観音。この観音の加護で海難を逃れた漁師春日為光が、馬頭観音の像を作ったとの伝承が伝わる。また、山頂で護摩の火を焚く青葉山は若狭の海を行き交う海の民の目印だったとされ、海上安全と山岳宗教が合体した同寺は、古くから海に生きる人たちの信仰を集めてきた。松尾住職は「寺の歩みを確認する資料として貴重なものです。戻ってきた船絵馬を見て改めて寺の歴史をひもとく思いがしました」と話していた。船絵馬は元の本堂に掛けず、宝物庫で保管する。
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