重文民家の暮らし伝える 小倉の「行永家住宅」引き継ぐ行永さん 本出版、解体修理・維持の苦労と喜び 4月29日、住宅一般公開【舞鶴】
投稿日時:2011年04月26日(火)
小倉の国指定重要文化財の民家「行永家住宅」所有者で、元京都大学教授の行永壽(ひさ)二郎さん(79)が、重文での暮らしをまとめた『古民家の風』(四六判、158ページ、東京図書出版会)を出版した。京都市左京区の自宅と行き来しながら、築190年の歴史の古民家を引き継ぎ、住みながら保存に努める苦労や喜びを綴り、伝統的な木造建築の住文化と魅力を伝えている。 行永家住宅は1820(文政3)年の建築で、主屋は木造平屋一部2階建て、入母屋(いりもや)造り。丹後地方に現存する瓦葺き農家として最も古く、この地方の民家様式を残すことから、1975年に重文指定を受けた。当主は江戸期に小倉村の庄屋も務めた。 老朽化のため府教委に修理を委託し、国や府の補助金を得て01年から2年間かけ解体調査と保存修理を実施。重文民家の従来の修復は当初の姿への復元を最優先にしていたが、行永さんは住みながら維持しようと、居住空間を併せ持つ方法を採用する先駆けとなり、関心を集めている。 少年時代を小倉で過ごし、大学進学を機に京都市へ。重文指定に関心はなかったが、82年に父亡き後に管理を続ける中で、民家を伝えようとの思いや所有者としての意地が生まれた。現在は京都と舞鶴を月半々行き来しながら暮らし、重文の所有者側の思いとともに情報発信をしようと本づくりをした。 保存を決意するに至るまでの様子、解体調査で主屋の上屋(2階)の瓦は1度も葺き替えられず使われていたことが確認され、建築年代も5年さかのぼることも分かるなど家屋の変遷過程、修復計画で居住部分に対する文化庁との相談の経過も紹介した。 完成後、土間のかまどで米を炊き庭の風景を楽しみ、囲炉裏の火を囲んでの会合の生活を送り、毎年春と秋に一般公開を行い、地元住民の保存維持協力会が清掃作業などに取り組むことも記した。「古民家活用の第一はまず住むこと。次に伝統的な住文化や地域の歴史を学ぶ場」と結ぶ。 行永さんは「維持費もかかる点もありますが、公共の文化財として住みながら残していきたい。またこの家が地域づくりにも役立てば」と話す。全国の書店で発売中。1,200円+税。 4月29日午前10時~午後4時、一般公開を行う。入場無料。
【問い合わせ】電話66・1073、市教委
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