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輝く地域力~下安久金毘羅会 独自で作品展を開催

輝く地域力~下安久金毘羅会 独自で作品展を開催

投稿日時:2020年07月28日(火)

 例年開催される余内地区一帯の老人会による作品展が、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて中止となった。合同での作品展は中止になったものの、これに出品予定だった下安久金毘羅会(岩崎育正会長)がこのほど、独自に下安久集会所で作品展を開催。地域の息づかいが聞こえるような作品の数々が並び、集まった参加者らは絶え間なく話に花を咲かせ、笑い声を響かせた。

 中止が決まった余内地区作品展は元々、地区対抗で競った区民運動会がなくなった代わりに始まったもの。運動から展示へと姿を変えたが、作品を通じた交流は地区ごとの理解を深め、楽しみにしている会員も多いという。中止が決まり肩を落とす会員を横目に、「せめて自分たちの地域だけでも開催しようか」と声を上げたのが金毘羅会だった。同会はおよそ90世帯ある下安久地区内の老人会で、現在会員数は40人ほど。昭和55年に設立され、初代会長を全輪寺(下安久)の住職が務めた。現会長は11代目。以来40年、様々な困難を乗り越え、互いに手を携えて地域力を高めてきた。昭和の名曲を流しながら開催されたこの日は、書や手芸作品をはじめ子どもの成長をつづった思い出の写真や住民が作った野菜まで、多種多様な展示品が並んだ。同地区内には大工などの建築関係者も多いといい、「下安久の名工」として紹介するコーナーもあった。平成10年に建てられた同集会所も設計から建築に至るまで地区住民が手掛けている。嫁入り前に『ミス黒谷和紙』として百貨店で紙漉きの実演をする写真や和紙を展示した南部たずこさん(72)は、和紙で有名な綾部市黒谷地区から24歳でこの地へ嫁いだ。南部さんは“たずちゃん”と快く受け入れられた当時を振り返り「気づいたらもう48年経っていました。居心地の良さは、今も昔も何ひとつ変わりません」と笑顔を弾けさせた。吉原小卒業生の波越とみ子さん(84)は、卒業生代表として読み上げた送辞などを展示。「記念に持っておきなさいと先生が渡して下さった卒業式のことや学校での記憶が、昨日のことのように蘇ります」と目を輝かせた。

【悲劇を繰り返すな 強い気持ちが地域の力に】

 古紙回収や体操など、高齢者間で支え合う同会の活動の中には「見守りたい」というものがある。今からおよそ5年前に始まったこの活動。地域内の高齢者が孤独死したことがきっかけだった。「ショックでした。同じ地域にいながらこんな悲しいことは二度と繰り返したくないと思った」と話すのは飯田史郎さん(85)だ。飯田さんは早速、見守り活動をしようと提案し役員会で呼びかけた。しかし個人情報の扱いなども難しい現代とあって、皆は簡単に首を縦には振らなかった。真剣に説得するも、否定的な意見が飛び交い「どうして分かってくれないのか」と悔しさや苛立ちが爆発した飯田さん。ついには会議の場から怒って帰ってしまった。すると間もなく、「自分から言い出しておいて怒って帰るなんてどういうつもりだ。いま前向きに皆で話し合っている。早く戻ってこい」と引き戻されたという。うわべではなく真剣にぶつかり合える間柄を振り返り、飯田さんは「本当に嬉しかったですよ。嬉しいのと同時に、怒って帰ったことが今さら恥ずかしいやら」と笑顔を見せた。そんな風に紆余曲折を経て始まった活動だが、最初は干渉されることへの不快感からか「何しに来た」と怒られることもあった。しかし、「地域のことは地域で守りたい。悲劇を繰り返さない」その一心で、定期的な見守り活動を続けてきた。市内でも、老人会が独自に見守り活動を展開している例はめずらしい。徐々に認知度が高まったこの頃では、訪問時に「ちょっと上がって行って。これ見て行って」と家族写真を手に、若い頃の思い出話に花を咲かせる人も多くなった。住民の“これまで”を知り合うことで自然と距離感は縮まった。「せっかくならみんなに見てもらおう」と呼びかけてはじまった作品展。「どんな風に飾ってあるか、せっかくだから覗きに来てよ」そう言って外出も促した。「地域のことなのに人任せにするわけにいかない。できることはできるだけ自分たちで何とかしないと」と話す飯田さんの言葉は力強い。人生100年時代と言われる昨今、人とのつながりを無くして健康寿命を延ばすことは難しい。同会の地域愛をもとに培われた地域力の強さは、まさに本市の宝といえるのではないだろうか。

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