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見えていたあの頃 蘇る

見えていたあの頃 蘇る

投稿日時:2018年01月05日(金)

 舞鶴出身の全盲のシンガーソングライターである福本さんが、母校の城南中(境谷正人校長)で初のコンサートを開いた。33年振りに来校した福本さんは後輩たちに同年代の時に感じた辛さや生きることの素晴らしさを語りかけた。

【奇跡の1年半過ごした城南中】

 先天性の視覚障害を持つ福本さんは15回に及ぶ手術を経験している。幼いころから目の状態によって学校が変わり、中筋小、盲学校舞鶴分校、城南中などを転々とした。手術のために学校と病院を往復する日々だった。6年生の冬に角膜移植により一時的に視力が回復し、急きょ城南中学に進むことになった。1年半の間、同中で「見える時間」を過ごした。2年生の途中で拒絶反応により視力が悪化、京都府立盲学校に転校した。大人として歳を重ねるにつれて、唯一見えていた時間を過ごした同中で演奏したいという思いが募りコンサートが企画された。

【念願のコンサート】

 体育館に集まった全校生徒の前で、ピアノを弾き、オリジナル曲や若者もよく知る人気曲など全13曲を披露した。また、吹奏楽部と共演し、「名探偵コナン」のテーマ曲を一緒に演奏した。迫力の生演奏に生徒らは1曲ごとに大きな拍手を送った。曲の間には、小学校時代の生活や、角膜移植をしてくれた人が同級生だったことを知った過去などを涙ながらに話す場面もあった。福本さんは「たったの1年半だけど、見えるようになったのは奇跡のような事だと思う。見えていたあの頃が蘇ります。本当に今思うとうれしい時間を過ごせた。自分が通っていた学校で演奏できたことは大きな思い出になる。今日の思いとともに今後も活動していきたい」と生徒らに語りかけた。生徒代表でお礼の言葉を述べた村尾茜さん(15)は「私もピアノを習っていますが、目をつぶって弾くのは凄い。演奏や聞いた話を学校生活に生かしたい、良い思い出になった」と話した。

〈記者の独り言〉
 「母校である城南中学校でコンサートをしたい」と長年思っていた福本さん。何度もお願いして承諾をもらおうと思っていた所、境谷校長の名前を聞き「あっ!」と思ったという。福本さんは府立盲学校高等部の時に境谷先生から体育を学んでいたのだ。そんな奇跡のようなつながりも今回のコンサート企画の裏にはあった。
(井上 務)

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