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荒田さん、定点採集の成果が目録に 自宅庭で12年間、甲虫類960種で日本一【舞鶴】

荒田さん、定点採集の成果が目録に 自宅庭で12年間、甲虫類960種で日本一【舞鶴】

投稿日時:2005年06月07日(火)

発行された目録を手にする荒田さん。後ろは庭に面した縁側に設けた採集用のブラックライトと水盤

 「丹後・若狭虫の会」会員の荒田弥五郎さん(71)=高野台=が、1993年から12年間にわたって、自宅庭でカミキリなどの甲虫類960種を定点採集し、その成果の目録を日本甲虫学会から発行した。脊椎カリエスで歩くことが難しい荒田さんは、庭に捕虫具を仕掛けて集め、その中の70種は府下で初めて確認された。同学会は「1人が12年間も民家の庭で定点採集した記録は過去に例がない。種の数も日本一だろう」、虫の会は「自然環境の変化を虫の側から見る重要な資料」としている。中学時代から蝶の採集をしていたが、カリエスが悪化し高校卒業後に歩行が難しくなり、採集を断念した。その後、入会した虫の会が府北部の甲虫調査に取り組みを開始し、調査の依頼を受け39年ぶりに採集を再開した。自宅は千石岳などに近い住宅地の一角で、見晴らしのいい高台にある。ベッドで過ごすことが多い荒田さんの部屋から、田畑を見渡すことができ、近くには高野川も流れる。縁側にブラックライトを夜間点灯し、下に置いた水盤に落ちた虫を集めるナイターと呼ばれる方法を主とし、プロ野球のテレビ中継を見ながら採集した。「8月には一晩で100~200匹の甲虫が集まり、その中からこれまで採集していないものを選び出す作業に苦労した」という。二年前からは昼間に飛来する虫を布で採集する仕掛けも設置。3年前から付近の街灯が、蛍光灯から赤色灯に変わって虫が少なくなり、南方に生息する甲虫が定住化している変化に気づく。目録の「地域甲虫自然史 第1号」(B5判、93ページ)には、93年7月~04年11月に採集した86科960種を掲載。共同筆者でもある同学会運営委員の水野弘造さん(67)=宇治市=が名前を確認・分類し、和名や採集日のデータを記入した。北米からの外来種で東北などで見つかっていたコルリアトキリゴミムシなどが、今回初めて府下で確認された。1カ所での甲虫の定点採集では、専門家グループが96年から99年まで、皇居で調査・記録した73科738種を超えている。水野さんは「荒田さんの調査ではいろんな種がくまなく集まっており、まだ周辺に自然林が残っていることが考えられる」と指摘した。虫の会事務局長の安川謙二さんは「定点採集は続けるのがとても難しく、荒田さんの調査に甲虫学会も驚いていた。多くの研究者への励みにもなる」と讃えた。荒田さんは将来環境が変わっても、豊かな自然があったことを目録で知ることができるとする。「こんな数になったのは地の利があったのでしょう。社会に関わることに縁が薄かった私が、晩年にこうした形で社会に参加でき、ささやかな生きた証を遺せたことはとても幸せ。水野さんや関係者のおかげです」と感謝していた。今後も調査を続けたいという。目録は500部作成し、450部は関係者に配布した。問い合わせは安川さん(電話63・3819)へ。

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