茶がつむぐ当地の誇り 5年連続産地賞の金字塔
投稿日時:2017年07月25日(火)
府北部の母なる川・由良川の流域にまばゆいばかりの緑色に染まった舞鶴茶の産地が広がる。昭和の初めから茶作りに最適という気候や風土に育まれた中、今も続く生産者たちのたゆみない汗と努力は、舞鶴茶が全国的に高評価を受ける結晶となって実を結んでいる。「かぶせ茶」で5年連続産地賞に輝いた女性リーダーをはじめ、舞鶴茶を活かしたスイーツの登場など話題を追った。
「最初は大変でした。悔しい思いもいっぱいしましたよ」そう語るのは植和田農園の植和田英子さん(75)。凛とした優しい語り口には、常に茶業への思いが一本通っている。全国茶品評会※「かぶせ茶の部」(個人の部)では平成28年度全国第3位、27年度は第2位を受賞。5年連続産地賞(団体優勝)を受賞した立役者でもあり、舞鶴の茶業を引っ張る女性リーダーだ。昭和39年、22歳の時に大江町から嫁いだ。5人兄弟の末っ子。農業を営む両親が朝から夜遅くまで働く姿を見て、農家に嫁ぐことに抵抗があった。「農業はしなくていい」という条件で嫁いだが、6、7年経つと、義父母が営む茶畑の草取りを子どもと一緒に手伝い始めた。平成5年に薬師口茶業協同組合の組合長に就任。茶業組合としては全国初の女性組合長であった。当時は男性社会で苦労も多かったという。「女性はさらし者みたいな扱いでした。会合では意図的に発言を求められたり、お茶の品質が悪いと言われたり。3、4年は本当に悔しい思いをしました。でもやがて見る目が変わってきました」と振り返り「女性が入ることによってギスギスした空気が柔らかくなる。女性だからこそ出来ることがあります。あの苦労があったから今がある」と話す。平成9年には、舞鶴の茶組合を1つにしようと舞鶴茶生産組合が立ち上がった。より高品質な茶の生産が可能となり、平成24年には第66回全国茶品評会でかぶせ茶の部で産地賞を初めて●受賞。「舞鶴茶」の名が全国に広まった。市も全面的に「舞鶴茶」をPRしている。クルーズ客や市内のホテル宿泊客への無料配布、成人式などの各種イベントでも「舞鶴茶」が振る舞われることが多くなった。6月には一か月間、市役所で冷茶器を設置し、水出し玉露を振る舞った。「今では色々な所で、私たちの作ったお茶が売られています。また、東京や大阪などお土産で購入された方から、美味しかったから欲しいと連絡がくることもあります」と植和田さんは話す。
【全国茶品評会出品茶審査会 】
全国茶品評会出品茶審査会とは、年に1度行われるお茶の品評会。お茶の味わい、色、香りの良さが審査される。全国の茶産地から「煎茶」「深蒸し煎茶」「かぶせ茶」「玉露」「てん茶」「蒸し製玉緑茶」「釜炒り茶」の7茶種から「普通煎茶10キロ」「普通煎茶4キロ」「深蒸し煎茶」「かぶせ茶」「玉露」「てん茶」「蒸し製玉緑茶」「釜炒り茶」の8部門に出品される。三重県鈴鹿市で行われた昨年の品評会では18都府県の茶産地から848点が出品された。「かぶせ茶」部門では8府県から105点が出品された。舞鶴市は5年連続「産地賞」(団体優勝)及び、個人の部でも1位から5位までを受賞した。
【知られざる”舞鶴茶”】
舞鶴茶の市内での流通量は少なく、多くが宇治茶の原料になる。植和田農園でも7割を京都府の業者へ卸している。その為、「舞鶴茶」として市場に流れるのはごく一部だ。舞鶴茶は彩菜館や赤れんがパークを始め市内のスーパーなどで販売している。「今は新茶が出ているので良く売れています。賞の受賞を知っている方も多いですし、なかには農園の表示を見て買われるかたもいますよ」(販売関係者)しかし、舞鶴市民に「舞鶴茶」が根付いているのかというと、必ずしもそうではない。「お土産として購入される方は多い、特にアジアの方からは日本茶=高級茶というイメージがある。だが、市民に定着しているとは言えないと思う。私の周りでも知らない人、飲んだことがない人は多い。逆に旅行者など市外の方の方が良く知っているかもしれません」(別の販売関係者)植和田さんは「舞鶴でお茶が採れることを知らない方がまだ沢山おられる。子どもの頃から馴染むようにと、市では「出前講座」などにも取り組んでもらっているが、先生方自体が舞鶴茶の良さを知らないのも原因の1つだと思う」と指摘する。
※2017年7月25日 発行/舞鶴市民新聞 第3146号(2017年暑中特集号) 掲載記事より抜粋
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