若き感性が躍動~伝統産業の維持・再生に活力を
投稿日時:2019年12月24日(火)
総務省の主催する「高専ワイヤレスIoT技術実証コンテスト」で採択を受けた舞鶴高専のチームが、地元企業の協力を得ながらプロジェクトを進めている。15日には、福原表具店(平野屋)とともに、「ええもんフェスタ」に出展。制作物に対する来場者らの声を参考にしながら、商品化を目指していきたいとしている。
同コンテストは、全国の高等専門学校の学生を対象に、第5世代移動通信システム(5G)及びワイヤレスIoTの関連技術を活用することによって、地域課題の解決や新たなサービス創出を図るアイデアを公募するもの。今年度は77件の応募があり、10件が採択された。舞鶴高専のチームは研究予算300万円の拠出を受け、7月から開発、実証を進めている。現在、改良を進めている制作物は2点。1024個のフルカラーLEDによる「あやなす行灯」は、コンピューター制御により周囲の雰囲気を自動で読み取って様々な色や動きで点灯させるもの。また、前述のフルカラーLEDを9台搭載した大型看板の「あやなす和額」は、和紙によって上品さを演出し、和食店や旅館の電光看板としての提案を想定しているという。チームを率いるのは、同校電気情報工学科5年の尾藤大喜さん。チームには内田俊也さん(同科5年)、出水幹大さん(同科4年)が名を連ね、3人が日夜知恵を出し合い、開発を進めている。尾藤さんは、昨年度にも同コンテストに応募し、今年度同様に採択を受けた。そのプロジェクトは採択だけにとどまらず、地域貢献賞も受賞。市との連携で地域の活性化に貢献したことが高く評価された。また尾藤さんが個人で応募した、同コンテストの「ロゴマーク募集コンテスト」でも最優秀賞を受賞する快挙を成し遂げた。最高の結果に終わった昨年のコンテストだが、尾藤さんは満足していなかったという。「システムを完成させることに精一杯で、いろんな人の評価を聞くことが出来なかった」自身の研究がもたらす広がりを追求したいという思いが、再挑戦への動機づけとなった。
【協力者を得て さらなる飛躍へ】
「すごく良い取り組みなのに、和紙本来の良さを生かしきれていないと感じた」と話すのは、平野屋で表具店を営む福原習作さん(52)と妻のルミ子さん(47)。保護者として訪れた高専祭で目にした尾藤さんらの制作物を前に、専門家としての助言が口をついて出た。福原さん夫妻は5年前にも、高専生の卒業研究で黒谷和紙を障子に貼る指導をした経験があり、協力依頼の申し出を快諾した。デザイン面で制作物の完成度は大きく変わるため、福原夫妻は尾藤さんらにとってまたとない協力者となった。以来、専門家の指導により制作物の完成度は高まっていった。実際に黒谷和紙の製造現場に福原さんとともに足を運び、伝統工芸にも触れた。福原さんとともに出展した「ええもんフェスタ」では、多くの来場者が制作物に見入り、口々に感想を述べた。尾藤さんは、「素材に使うことで話題性が生まれ、新たな需要を掘り起こすことが出来れば地域活性につながる」と自信を深める。一方で福原さんは、「先進技術との融合で新たな和紙需要が生まれれば、伝統産業の維持につながる。弊社にとっても、新たな販路が創出できることを期待している」と笑顔を見せた。若い感性と伝統産業のコラボレーション。全国の先端を行く舞鶴高専の取り組みに、今後も目が離せない。
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