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産地の団結が快挙もたらす~志高の菱田さん 品評会で全国1位

産地の団結が快挙もたらす~志高の菱田さん 品評会で全国1位

投稿日時:2019年09月10日(火)

 愛知県でこのほど開かれた「第73回全国茶品評会」のかぶせ茶の部で、舞鶴茶生産組合岡田下支部の菱田繁政さん(69)が全国第1位となる農林水産大臣賞を、妻の美代子さん(68)が第2位となる農林水産省生産局長賞を夫婦ダブル受賞する快挙を成し遂げた。

 全国の茶農家・産地が品質を競う同品評会には、19府県から8部門に計920点が出品された。かぶせ茶部門には京都府をはじめ三重県、静岡県など全国7府県から111点が出品され、品質を競った。同部門では、全国第4位に同支部の増茂義郎さんが入り、それぞれの部門上位3人の点数で決める市町村単位の「産地賞」を舞鶴市が受賞した。舞鶴市の同賞受賞は3年ぶり6回目となり、名産地の面目躍如となった。かぶせ茶は、新芽が開き始めた頃に茶園をヨシズやワラで20日間ほど覆い、日光を遮って育てる。光を制限して新芽を育てることによりアミノ酸からカテキンへの生成が抑えられ、渋みが少なく旨味が豊富になる。舞鶴市は、平成24年にかぶせ茶部門の産地賞を初受賞。それは昭和初期から始まったという加佐地区での茶業に、明るい春の到来を告げる快挙だった。しかし長年続く茶業の伝統の維持は容易ではない。従事者の高齢化は進み、後継者もないことからやむなく茶園を手放す人も多い。そんな中、菱田さん夫婦は10年前に茶園を引き継いだ。永年経営してきた建設土木の会社から引退し、第二の人生を考えた上でのことだった。「土木建設業は春以降が閑散期になる。最初は従業員の新たな仕事になればいいと、簡単に考えていました」と引き継いだ当初を菱田さんは振り返る。
 菱田さんは昭和25年、志高で生を受けた。父は自ら始めた土木建設業を営み、妹、弟との3人きょうだいだった。
高校卒業後、名古屋に出てトヨタ自動車に入社するが、ほどなく体調を崩して帰鶴。その後、集団就職で舞鶴に来ていた福岡出身の美代子さんと出会い、結婚した。それ以降は、二人三脚で家業に取り組んだ。先祖代々の田があり、多少の手伝いはしたが農業のことは何も知らなかったという。「本当に自分たちに出来るのかと何度も不安になりました」と美代子さん。機械の使い方から肥料のやり方まで知らないことばかり。茶園のそばを通りかかる人を見つけるたび、教えを請うた。農業の先輩たちは、面倒くさがることもなく、常に熱心に教えてくれた。二人はいつしか茶業にのめりこみ、「良い茶をつくる」ことに無上の喜びを感じるようになっていった。茶に取り組んだ10年間に、志高の地は何度も水に浸かり、その度挫けそうになった。しかし、自分たちだけで取り組んでいるのではないことが心を支えた。受賞の報を受け取り、菱田さんの師匠とも呼べる先輩農家は、自分のことのように涙を流して喜んでくれたという。「今回の受賞は、自分たちの力だけでつかんだものではない。150人ほどの摘み子さん、加工作業の方々、日々苦労を共にする同業者、みんなの力の結晶だと痛感しています」と二人は口をそろえた。団結の力でつかみとった快挙。全国屈指の名産地へ、その物語は次の舞台に移った。

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