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生きる力の熱 感じて ー舞鶴引揚記念館  新収蔵品展ー

生きる力の熱 感じて ー舞鶴引揚記念館  新収蔵品展ー

投稿日時:2021年01月29日(金)

新収蔵品の防寒着を紹介する清さん

 平の舞鶴引揚記念館で、令和元年度に収蔵した新たな資料を紹介する企画展「新収蔵品展~紡ぐ記憶~」が始まった。同展では新たな寄贈資料など131点が展示され、来館者の注目を集めている。

  同館には昨年度(令和元年度)、52件164点の新たな資料が集まった。その主なものは、作詞家の故藤田まさとさん直筆による「岸壁の母」の歌詞(写真①)や「ドイツ兵と交換した帽子」(写真②)、「抑留中に着用していた防寒着」、「回想記録画」(写真③)など。今回の企画展では、同館学芸員の清せい彩華さん(23)が中心となって展示方法などを考えた。清さんは、「展示品は、未来へ紡ぐ記憶として平和への願いを込めて紹介する品々。多くの人に見てもらいたい」と話している。「岸壁の母」は昭和29年に発表され、歴史に残るヒット曲となった。寄贈者の今村志津子さんは、作詞家である藤田さんの姪になる。額縁に収められた歌詞は、新築祝いとして昭和53年に書いてもらったという。「ドイツ兵と交換した帽子」は堤昭子さんの寄贈。ウズベキスタンのアングレンで2年間の抑留生活を送った堤さんの父が、ドイツ兵と交換したものだという。高田照夫さんが寄贈した「回想記録画」は、自身と同じシベリア抑留体験者の友人から父がもらった絵画。絵の裏に「この長閑そうに見える絵は牧野君と共にシベリア抑留の思出である 高田英夫」と記されていることから、父と友人が抑留中に共有した思い出の一場面であると考えられる。

【時代が求める姿に たゆまぬ努力で日々進化】

 新たに企画展が始まった同館で、来館者への案内に勤しむ男性の姿があった。「舞鶴・引揚語りの会」会長の宮本光彦さん(73)だ。フェイスシールドを着用した宮本さんは、来館者と一定の距離を保ちながら各所で案内をしていた。昨年の緊急事態宣言下では休館を余儀なくされた同館だが、修学旅行の行先変更などで生れた新たな需要で、案内業務も多忙だったという。そうした環境下で、宮本さんは「コロナと共存する新しい語り部スタイル」と名づけたマニュアルを作成。「環境の変化に対応して、我々も努力していきたい」と力を込めた。一方、はじめて取り組んだ企画展がスタートし充実感を漂わせる清さんは、「緊急事態宣言下でのスタートとなったが、感染対策にも注力して来館者をお迎えしい」と話す。静岡県出身の清さんは、京都芸術大(旧京都造形芸術大)の歴史遺産学科で学び、2019年から同館の学芸員として勤務する。学生時代は近現代の農機具などの調査を手伝ったりしたというが、縁あって舞鶴に。清さんは、「はじめは引揚の史実に対しては暗い印象を持っていた」と話す。しかし、理解が深まるにつれてそうしたネガティブなイメージは消えていったという。「むしろ、過酷な環境下にあっても楽しみを見つけたり、工夫したりする人々の生きる力に勇気づけられる」と清さん。コロナ禍に喘ぐ今の社会への示唆に富んだ収蔵品の数々を、「ぜひ見てもらいたい」と熱弁した。同展は4月11日まで開催する。※展示期間中の休館日は2月18日と3月18日。

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