珠玉の句集 頂に~本市出身・大石さん 第55回「蛇笏[だこつ]賞」に輝く
投稿日時:2021年05月25日(火)
本市北田辺の出身である俳人・大石悦子さん(83)=大阪府高槻市=の句集「」(ふらんす堂刊)=写真=が、第55回「賞」に輝いた。俳人・飯田蛇笏の遺徳を敬慕して設立された同賞は、俳句界に最高の業績を示した句集に贈られる。当地でも、同郷の俳人が掴んだ栄誉を喜ぶ声が広がっている。
蛇笏賞は、公益財団法人「角川文化振興財団」の主催で、1967年に創設された。同様に釈迢空にちなみ創設された短歌部門の迢空賞では、歌人・俵万智さんの「未来のサイズ」が今回の受賞作となっている。句集「百囀」は大石さんの第六句集にあたる。2012年から平成の終わる2019年4月までの357句を収録した。書名の「百囀」は多くの鳥のりのこと。大阪の郊外にある自宅へ、四季をとおしてやってくる野鳥への親近感をこめて名づけた。「鴛鴦の絢爛と流れゆきたる」「春の山とは父もゐき母もゐき」「擬態して自切して竹節虫枯る」など、情感豊かな句が収められている。ふらんす堂のホームページでは、「大石悦子の俳句日記」というコーナーも持つ大石さん。その経歴は、鶴俳句賞受賞(1980年)。第30回角川俳句賞受賞(1984年)。第10回桂信子賞受賞(2018年)などと華々しい。現在は俳人協会顧問をはじめ、日本現代詩歌文学館評議員、 日文藝家協会会員など、俳句界の第一人者として活躍。今回の偉業について舞鶴俳句協会の福井久生会長(76)は「日本で一番権威ある賞で、本当に自分のことのように嬉しい。受賞によって当地も盛り上がり、ありがたい気持ちです」と喜びを爆発させた。
【ふるさとへの想い 今なお強く】
大石さんは、1938(昭和13)年、北田辺で生を受けた。5人きょうだいの真ん中。兄姉、弟妹に囲まれ賑やかな幼少期を送った。明倫小に通った小学生当時、毎日通った通学路は今でもはっきりと思い出せるなど、「ふるさとには今でも強い愛着を感じている」と話す。その後、城北中、西舞鶴高へと進んだ大石さん。俳句には高1の時、出会いの機会を持った。当時は、戦時中に抑圧された文芸が解放され、花開く時代の流れを感じたという。以来、24歳で結婚し、出産も経験したが、俳句から離れることはなかった。「17音という短いセンテンスで自分を表現できる俳句が、性に合っていた」と大石さん。今回の受賞については「手放しで嬉しいというような心境ではなく、まだ遠くから見ているような心持ち」と話しながらも、「私は舞鶴に育てられた」とふるさとへの感謝を口にした。今でも帰郷する時、真倉駅を通過した電車が西舞鶴の市街地に入るあたりで胸が熱くなるという。大石さんは「あれが私の原風景。(舞鶴で過ごした時間は)人生の中では短い一時期だが、濃密な時間。記憶の豊かさを支えているふるさとの人や思い出が、今の自分を育んでくれたと強く感じる」と舞鶴への思いをあふれさせた。特徴ある当地の風土性が育んだ珠玉の句集。手に取っていただき、同郷の俳人が刻んだ偉業をともに喜んでいただきたい。
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