「次の住まい」見通し不透明 土地のかさ上げ 地権者多く調整進まず 手続き簡素化、国に求める【舞鶴】
投稿日時:2013年10月29日(火)
岩手県内で最大の被害を受けた陸前高田市。参加者の1人、高水間(こうずま)一隆さん(71)は、1年ぶりにまちを見て、「トラックや重機は増えているけれど、まちの様子は昨年と変わっていない。元のまちの姿に戻るには何年かかるんだろう」と感じた。
壊滅した元市街地をバスで走る。被災施設はほぼ解体され、一面草に覆われた区画や、重機など工事車両が目につく。がれきの山はないが、手で金属などを選別する人たちの姿はあった。店舗は思っていたよりも多いが、まだ仮設の建物だ。
死者1753人を数え、全壊は3159戸。震災前の人口2万4246人から、9月末現在で約3600人が減少した。仮設住宅は53団地、5094人が暮らす。震災前738の事業所の内、営業を継続・再開したのは45・7%にあたる337事業所、廃業は200事業所。雇用状況は震災以前の水準まで回復し、有効求人倍率は2倍近い。水田の被害面積は陸前高田が県内の65%を占め、沈下した土地をかさ上げし来年度から耕作を始められるようにする。
仮設で暮らす市民にとって、一番の関心は次の住まいだ。同市の計画によると、防災集団移転促進事業で32団地470戸、災害公営住宅事業で12団地の1000戸を造成や建設する。市街地の高田地区と今泉地区の計316ヘクタールでは土地区画整理事業を計画、高台の造成と8~10メートルのかさ上げを行なう。造成地に住宅を自力再建する方法も選べる。
現在、防集は14団地で着工し、一部は年内に造成が完了するが、用地契約の準備中の地区も数カ所ある。公営災害住宅は一部着工済み、早くて来年春に、遅くて2016年の入居予定だ。土地区画整理事業は、一部で国の先行認可を受け整地を進めているが、同市は全体の事業認可を来年2月に目指し、15年度から18年度までに住宅着工を可能とするスケジュールを立てる。
土地のかさ上げには地権者1人1人の起工承諾が必要だが、両地区で地権者は2000人を超え、対応に多くの人員と時間がかかる。その上、地権者が死亡しているが遺産分割協議がまとまらないなど相続手続きの未処理や多数共有地のケースがあり、複雑な権利調整の難航が予想され、どの被災地でも同様の課題が浮かぶ。
前述の旧矢作診療所跡地の仮設住宅自治会長、熊谷薫さん(76)は別の問題も指摘する。15カ所の高台の造成は早くて1年後、遅くて5年後だ。自力再建を考える住民は元住んでいた地区を望むが、抽選であるため希望通りにはいかない。
「抽選に外れれば、その次は2年後になるのか、5年後になるのか見通しがはっきりしない。私たちのような高齢者は長くは待っていられない」と不安を打ち明ける。
同市はこのほかにも、非常時にも関わらず特別措置法がなく、現行法の中で対応せざるを得ず、法的手続きに時間を要する▽復興庁の考え方に変化があり、復興交付金の要望に際し多くの説明資料が必要で、その対応に追われている、など復興を進める上での困難に直面する。復興事業の迅速化に向け、国に対して手続きの簡素化を求めている。
高井さんは「震災から2年半が経過し、住民は仮設を出て家を建て暮らしていると思っている人もいます。被災地の現実を知り、伝えていきたい」と改めて想いを強くした。(青木信明)
写真左=高田小前で基礎工事中の災害公営住宅。来年秋に入居の予定(陸前高田市高田町)
写真右=後方の山を削って高台が造成されている。土砂を運ぶためベルトコンベアーを設置予定の橋脚(同市気仙町)
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