松尾寺・松尾住職が執筆、本出版 『歌僧 天田愚庵【巡礼日記】を読む』【舞鶴】
投稿日時:2005年01月11日(火)
西国二十九番松尾寺の松尾心空住職(76)が、『歌僧 天田愚庵【巡礼日記】を読む』(四六判、263ページ、すずき出版)をこのほど出版した。愚庵(1854~1904年)は、清水次郎長の養子となり、正岡子規が教えを受けるなど波乱の人生を歩んだ禅僧。西国巡りなど徒歩巡礼7000キロに及ぶ松尾住職が、愚庵の西国巡礼の日記を読み解き、愚庵が親の姿を求めて旅立った心の軌跡をたどった。松尾住職は四国八十八カ所などこれまでに7000キロを歩いた。特に西国札所巡りは、昨年6月から12月にかけて法灯リレー西国徒歩巡礼を踏破し、5周目の巡礼を終えた。愚庵の存在を知ったのは約十年前。愚庵が日記に記した同寺大師堂を調べるために訪れた福島県の愚庵研究家から教わった。自身の巡礼体験と愚庵の巡礼日記が重なり、彼の魅力に引きつけられた。現在は無名の存在に近い愚庵だが、幕末・明治の政治家の山岡鉄舟に師事、養父の次郎長の一代記『東海道遊侠伝』を書き、講談や浪花節に登場する次郎長像の元になっている。また、夏目漱石は彼の詩才を讃えた。その一方、京都清水に庵を構えた生活は清貧を旨とし、歌壇や宗教界に与せず生涯孤高を貫いた。愚庵は15歳の時、戊辰の役に参加したが、両親と妹を見失い、それ以後はその姿を捜し求めたとされる。西国巡礼に旅立ったのも「我が心中に親の姿を求むべき」とあり、1893年(明治26)9月から93日間かけて歩いた。その旅を翌年に『巡礼日記』として出版し、「明治の奥の細道」と評価する声もあった。松尾住職は同日記の親を思う心に焦点を当て、西国巡礼による父母孝養を願って執筆。愚庵が松尾寺を訪れた際の様子をフィクションで再現したり、日記中に詠んだ詩歌からその心の軌跡をたどった。また、日記の妙録も掲載した。松尾住職は「巡礼によって愚庵をはじめ多くの出会いがあってうれしい。本が愚庵の再評価にもつながれば」と話していた。1冊1700円。書店で発売中。
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