東北・被災地ルポ 3.11を前に ―第4回― 岩手県釜石市① がれきの山 冷たい雪が降る 置き去りにされる被災者【舞鶴】
投稿日時:2012年02月28日(火)
次に岩手県釜石市を訪れた。釜石といえば新日鉄で知られるように鉄の町。そしてラグビー日本一のイメージから大きな町と思っていたが、現在の人口は約3万7千人。到着したJR釜石駅は小さな駅だが、その正面には巨大な新日鉄の工場がそびえる。 難民を助ける会の案内で、車で浜街道と呼ばれる国道を南下し、いまも残る被害の様子を見て回った。しばらくすると運転免許センター駐車場に、まだ置かれたままの被災車両が目に入る。 唐丹(とうに)地区のかまいしワークステーションへ。35人の障害者が利用し、プレハブの仮設作業所で車の部品づくりの下請け作業をしていた。震災前の釜石北部の施設は津波によって流されたが、全員避難して命をとりとめた。防災教育に力を入れている市内の小学校の児童を持つ女性が職員におり、保護者たちも受けた防災訓練が役立ったからという。 釜石で最も大きな津波被害を受けた鵜住居(うのすまい)地区に向かった。すり鉢の底のような地形で、地域の約7割の建物、市全体の4割にあたる約1800戸が被災した。雪が降る中、基礎だけ残す家、ほぼ全壊の家、修理中の音がする家。遠くには大屋根が壊れた寺がある。戸がなくなり吹きさらしの縁側には、白い箱がいくつも見える。運運転手が骨箱と説明してくれた。言葉が出ない。 海岸近くに全壊した釜石東中学校と鵜住居小学校があった。中学生が小学生の手を引き、全員が無事避難したことで何度も報道されている学校だ。黒ずんだ2つの学校にはタイヤやがれきなどが、校舎と同じ高さぐらいにグラウンドに置かれていた。 舞鶴で被災地の支援を続けるよしだ敦子さん(59)=舞鶴市浜=は、がれきに雪が降り積もる光景に涙が溢れてきた。そこにあるのは「哀しい。冷たい。何でなん」という気持ち。「これを毎日見ている住民たちは辛いだろうな」 大量のがれきは被災地で処理しきれず、401万トンを広域で協力を求めるも、受け入れる自治体は少ないと何度も報じられているが、1年近く経っても山積みのがれきを実際に目にして、被災者は「置き去りにされている」と感じているのではないだろうか。色彩を失ったモノトーンの風景が目に焼きついた。 (つづく)
写真=全壊した釜石東中学校のグラウンドに積み上げられたがれきは雪に覆われていた(1月31日、釜石市)
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