木舩さん(溝尻町)が初句集自費出版 60年間の句作の集大成『茄子籠』【舞鶴】
投稿日時:2009年06月23日(火)
溝尻町の農業、木舩史舟(ししゅう)さん(本名・律也、82)が、このほど初めての句集『茄子籠』(249ページ)を自費出版した。約60年間の句作の集大成になっているとともに、枠にはまらずに詠んだ仕事や家族、田畑を耕す想いの句が人生を振り返る足跡にもなっている。切磋琢磨してきた句友で、元舞鶴俳句協会会長の浜明史さんの墓前に完成を報告した。祖父や父が俳句に親しんでいた家庭に育った影響も受け、進学した京都府立農専(現・府立大学)で、教授だった林樟蹊子氏に師事し句誌「学苑」に入って作句を始めた。帰郷後に市職員となり、後に「龍」を主宰する浜さんと、「馬酔木」などへの投句を通して意気投合。仕事の多忙で吟行のゆとりはなかったが、「鶴」などに投句をし情熱を持ちつづけた。経済部長を最後に退職し、時間ができてからは浜さんら句友3人と、四Sの会を作って親交を深めてきた。句誌「苑」の創刊にも参加し、いまは専業農家として野菜を公設市場にも出荷し、農作業に関する句も多く作っている。句集の準備を約5年前から進めていた。一時中断を経て再開し、これまで作ってきた約4000句の中から、生活のにおいのするものに絞り、浜さんらが選句作業を手伝い、1947年から2008年までの400句を掲載した。父親になって詠んだ「芍薬は蕾吾子また乳こぼす」、共働きで残す子供を心配した気持ちを表した「鳥ぐもり子へ合鍵をひとつづつ」、「父祖の地のこだはりあつく畦を塗る」では先祖からの土地を噛みしめながら作業をする様子、「田を植ゑてちちははの土地飾りけり」には田植えを終えてほっとする気持ちを込めた。完成の報告を浜さんにするのを楽しみにしていたが、残念ながら昨年4月に亡くなった。意識の薄れる寸前まで浜さんは「携帯電話を持ってきてくれ、木舩君と話したいことがあるんや」と気にかけていた。完成後、本を手に一番に墓前に向かった。木舩さんは「浜さんは句集のことを何かアドバイスしたかったのでと思っています。師の『俳句は私小説』の意を汲み、これからも生活の歩みを詠んでいきたい」と話している。350部発行した。句友らに配布し、東・西図書館にも寄贈した。販売はしていない。
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