更なる飛躍へ 準備着々 今年度の寄港 終盤に
投稿日時:2017年09月22日(金)
クルーズ船が西地区の埠頭に停泊している風景に、物珍しさを感じなくなって久しい。今年の寄港は合計39回にのぼり、7月からは週に1回のペースで、客船のある風景を眺めることが出来る。この劇的な風景の変化は、私たちの暮らしにどのような変化を及ぼしたのだろうか。「千載一遇のチャンス」に向かう市民らの奮闘を追った。
【官民あげての挑戦はつづく】
西地区の埠頭を望む「大野辺緑地」。京都府が管理するこの公園はその絶好のロケーションが活かされることが少なく、これまでは閑散とした印象がぬぐい切れなかった。しかし、今年に入ってからは停泊中の豪華客船を眺めたり、撮影したりする絶好のスポットとなっている。2日には、同緑地で「『海の京都』を食いつくせ!フェスタ」が開催され、およそ8900人の来場者(主催者発表)でにぎわった。京都府中丹広域振興局と海の京都DMOの共催による同イベントは、「海の京都エリア」の魅力を、クルーズ船の乗客はもとより地域内外の人に広くPRすることを目的に企画され、約3カ月を準備に費やしたという。当日は府北部から幅広く42店舗が出店し、中には行列の出来る店舗もあった。「人を引きつける「食べ物」を核にして企画した」と中心になって運営を担った同局の水嶋式行(みずしま のりゆき)さんは話し、「一時的に雨天になったが、無事に終わって良かった」と成功を喜んだ。福知山市から来場した子ども連れの男性は、「舞鶴には海があってうらやましい」と話した。
【受入れ環境の充実に向けて】
同日、寄港中の「コスタ・ネオロマンチカ」を使用し、外国クルーズ船を対象にした初の防災訓練があった。
訓練には、府港湾局、コスタクルーズ社、市消防本部、第8管区海上保安本部から約50人が参加。火災のあった船内からヘリコプターでけが人を運ぶなどの訓練を、多くの来場者らが固唾を飲んで見守った。クルーズ船に搭載の小型船で運ばれた外国人乗組員には、けがの緊急度によって治療の優先順位を決める「トリアージ」を実施。日本語が話せない負傷者役には、救急隊員がスマートフォンの翻訳機能を使って容態を尋ねていた。関係者らは、「多くの船が入ってくる舞鶴港の安全を守っていきたい」と訓練の成果に満足した様子だった。第2ふ頭では、「海の京都駅」整備事業が来年度も引き続き実施の予定で、客船を迎え入れるハードは整いつつある。
【まちへの恩恵は】
一方、地元商店街には冷ややかな意見も広がる。西地区商店街で小売店を営む40代男性は、「クルーズ船がどれだけ来ても、乗客は結局よそに行って、舞鶴で消費するわけではない」と商店街にはためく客船歓迎ののぼりを恨めしそうに見つめた。そんな中、この好機を活かすべく試行錯誤する人もいる。舞鶴商議所を中心に組織された「ウェルカム舞鶴実行委員会」の志摩幹一郎委員長は、「まちを訪れる人は間違いなく増えている。課題はあるにせよ、好機に違いない状況をどうにかして結果に結び付けたい」と意気込む。「成功事例があれば、あとに続くモチベーションになるはずなので、まずはひとつ結果を出したい」同実行委員会では、貸衣装業を営む久下幸典さんが中心になって、この日も着物体験のブースを出店した。久下さんらはこれまでにもイベント出店を重ね、外国人観光客も含め延べ約40組の利用があったという。告知が行き届かず利用者はまだ少ないが、当地ならではのサービスに顧客満足は非常に高いと胸を張る。「ハードルは高いが、他ではチャレンジできないこと。今期は目立った成果を出せていないが、今後に繋がる一歩になった。しっかりと問題点を検証し、結果を出せるよう努力を続けたい」と久下さんは意欲に満ち溢れていた。今年度過去最高を記録した客船の寄港回数。客船のある風景が当たり前になった今、私たちは次のステップに足をかけている。今こそ、この風景を眺める人々の心が前向きな気持ちで満たされることを願いたい。
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