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新たな名物へ名乗り~忘れられない味を執念で再現

新たな名物へ名乗り~忘れられない味を執念で再現

投稿日時:2020年07月10日(金)

 根強いファンの多かった店の名物料理が、10数年ぶりに復活した。コロナ禍の最中[さなか]に執念で販売にこぎつけたのは、長らく旅行業界に身を置く一人の男だった

 その店の名は「みつる食堂」。七条通り沿いに店を構え半世紀、親子2代が紡いだ「ここだけの味」は15年前に惜しまれながら姿を消した。高校時代から足しげく通ったという矢野直人さん(47)も、店の熱烈なファンの一人だった。長年に渡って旅行業界で経験を積んだ矢野さんは、添乗勤務で全国津々浦々の味めぐりを積み重ねてきた。しかし、その豊富な経験を持ってしても、「みつる食堂のシュウマイ」は特別な存在だったという。矢野さんは、「各地の中華街でも、様々なシュウマイを食べてきたが、こんなに美味いものはどこにもなかった」と振り返る。それだけに、閉店の報はまさに青天のへきれきだった。気軽に味わえたソウルフードがもう食べられない。矢野さんがその時感じたのは、単なる喪失感だけではなかった。それは、「失ってしまうにはあまりにも惜しい、この美味しさを絶やすわけにはいかない」という使命感だった。

【試作品は1万個 たどりついた思い出の味】

 料理が得意というわけではなかったが、見えない力が矢野さんの背中を押し続けた。レシピを教えてもらい、その通りに作ることの繰り返し。しかし、それらはことごとく似て非なるものだった。舌の記憶を頼りに、理想と現実をすり合わせる。試作品を作り続ける中で、朧[おぼろ]だった夢も次第に輪郭が鮮明になってきた。再編が進む業界にあって、将来を考えると経営の多角化は避けては通れないようにも感じていた。そんな日々が過ぎて今年になり、大きな荒波が突如として押し寄せてきた。「新型コロナウイルス」だ。業界の在りようを根底から覆す激震だった。旅行業界は、騒動の影響が最も大きいと言っても過言ではない。キャンセルの嵐で、多くの売り上げが消し飛んだ。
「もうだめかもしれない」と普通なら思っていたかもしれない。しかし、矢野さんはそうは思わなかった。「この機会に腰を据えて、シュウマイを完成させよう」ピンチをチャンスと捉える思考が自然と沸き起こってきた。「手を痛めるくらいに作りました」と矢野さん。試作品が1万個を超えた頃、ついに「あの味」にたどり着いた。それこそが、閉店以来恋焦がれた「みつる食堂のシュウマイ」だった。7月7日七夕の日。旅行会社の店頭に、77パックのシュウマイが並んだ。イメージカラーの赤い袋には、元店主の許可を得た「みつる食堂シュウマイ」のラベルが貼られた。保健所の営業許可は、「たびカフェ」という名で取得した。矢野さんは、「ようやく、ここまでたどり着いた。これからこの味を、一人でも多くの人に届けたい。舞鶴にこんなに美味しいものがあるということを知ってもらいたい」と意気込みを話した。「みつる食堂シュウマイ」は、東舞鶴駅前の舞鶴トラベル内「たびカフェ」で販売中。1パック8個入り1200円。1個45グラムの大ぶりなシュウマイは食べ応えたっぷり。一度試してみてはいかがだろうか。

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