心を育む遊びの力~コロナに負けず創意工夫を
投稿日時:2020年08月28日(金)
人格を形成する上で最も影響を与えると言われている幼少期。長い人生から見れば短い期間だが、この時期の体験や経験こそが、その後の人生の行方を左右すると言っても過言ではない。しかし今年は教育現場も例外なくコロナ禍に見舞われ、これまで通りの活発な活動は出来なくなっていた。そんな中、子どもの成長に寄り添う多くの教員らが今、ウィズコロナの教育に創意工夫を凝らしている。
吉野の朝来幼稚園(畠中好野園長)も、緊急事態宣言を受けて一時休園を余儀なくされた。ようやく再開したものの、楽しみにしていた行事が中止や縮小となるなど、もどかしい日々が続いた。どこか発散しきれない様子の子どもたちに接し「思いっきり楽しく遊ばせてやりたい」と教員らの思いは日ごとに募った。そんな矢先の6月、シイタケ栽培農家の乾郁朗さん(大丹生)から、多数のカブトムシの幼虫と飼育に欠かせないクヌギを譲り受ける機会に恵まれた。大きな茶箱の中で、まだその姿を見ない幼虫を見つめる園児たちは興味津々。観察や飼育をする中で園児らは、疑問を投げかけては調べたり教え合ったりしながらカブトムシの成長を見守った。40匹ほどの成虫が育った7月には、同園のホールいっぱいに広がる『かぶとむしのやかた~カブトムシの世界へ行こう~』がオープン。当日は、わくわくするようなリズムのカブトムシのテーマソングをBGMに園児が入場。真剣な表情でテープカットも行った。ホールにはたくさんの飼育ケースが並び、元気に動き回る成虫やまだサナギのカブトムシなどを前に、園児たちは夢中で観察を楽しんだ。カブトムシを飼ったことはないという新谷大我くん(5)は「かっこいいカブトムシを見れてうれしい。隠れてゼリー食べるところが好き」と飼育ケースを覗きながら目を輝かせた。
オープンから数日間は一般開放もした。同じく行事縮小などにもどかしさを感じていた倉梯幼稚園から年長組園児たち40人が来園。ホールで“カブトムシの世界”にふれた後は、園児同士で遊び、交流を楽しんだという。子どもたちが喜ぶようにと天井から吊るした特大のカブトムシや天井まで届くほどの大きな木は、教員たちが紙や布を使って再現した。そこに園児たちが紙で作ったカブトムシやクワガタをたくさん貼り付け、その足元には、行儀よく列を成すアリの行列も作られた。壁面に貼った大きな模造紙には、「カブトムシの赤ちゃんがやってきた!」から始まり成長を観察する園児たちの様子をまとめた。虫への興味関心や探求心を高め、思考力を駆使し、満足感や認め合いなど様々な感情の中で、カブトムシに負けず劣らず急成長していく園児たちの姿をその時の会話や写真とともに紹介した。「子どもは遊びの天才。遊びを通して様々な勉強をしています。何事にも興味を持つことが大切で無駄なことは一つもない」と話す畠中園長は、「危ないことは止めますがそれ以外は見守りながら好きなようにやらせます」と笑顔を見せた。小学校教員として長年、多くの子どもに携わってきた畠中園長。その経験から賢い子や思考力のある子は、よく遊びたくさんの好奇心を持ち、様々な経験の中で学んでいる子どもだったと振り返る。今回の観察を通じて生と死を目の当たりにしてからの園児たちは、身の回りの昆虫や生き物に目を向け大切にし、興味を持ち熱心に観察するようになったという。カブトムシの短い生涯が、命の尊さを教えてくれたようだ。子どもたちが楽しく夢中になれる活動を目指し、園全体で取り組んできた企画。手づくりのテーマパークは子どもたちの心に何を残したのだろうか。来年もカブトムシの飼育を続けるという同園。児童教育に真剣に向き合うその挑戦から目が離せそうもない。
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