引き揚げの歴史世界へ伝える 市、ユネスコ世界記憶遺産に申請 「奇跡的に持ち帰られた希少な資料」 抑留綴った日誌、絵画など570点【舞鶴】
投稿日時:2014年03月07日(金)
旧ソ連などから13年間にわたって、約66万人の引揚者を迎え入れた舞鶴市は3月4日、舞鶴引揚記念館に所蔵しているシベリア抑留と引き揚げ関係資料を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に申請をした。資料総数約1万2000点の中から、抑留の様子を綴った日誌、絵画などの570点を選んだ。戦後70年の2015年の登録を目指す。
世界記憶遺産は文書や絵画などの記録資料が対象となり、2013年10月末現在、世界で300件が登録されている。審査は2年に1度行なわれ、次回の登録は来年。1つの国から2件まで推薦できる。
政府は国宝の「東寺百合文書」の推薦を内定し、もう1枠を抑留・引揚資料と南九州市が申請した鹿児島県知覧から飛び立った特攻隊の遺書など3件で競う。ユネスコが日本ユネスコ国内委員会に差し戻し、5月末までに同委員会が絞り込む。
市が申請した資料は570点。抑留生活の様子や望郷の想いを、白樺の皮に空き缶で作ったペン先で煤をインク代わりに和歌などで記した「白樺日誌」には、「幽囚の身こそ悲しき遺言もあらずて異郷に逝く人多し」などと記されている。
抑留先から家族を思いやる気持ちに溢れた俘虜用郵便葉書、夫の帰国を待つ妻が綴った日誌もある。掌に載る小さなメモ帳は靴の中や服に縫い付けて隠し、収容所や帰国後のGHQの持ち物検査を潜り抜けて持ち帰った。また、抑留中に労働の様子などを描き没収を逃れた絵画、帰国後に描かれた記録画などもある。
この日、電子メールで申請をした多々見良三市長は「これらの資料は人間愛、家族愛、平和への願いなど普遍的な主題を含む記録であり、戦争の悲惨さや平和の尊さを世界に語り継いでいくことができると確信している」と述べた。
申請に向け資料の意義を検討してきた東京女子大学の黒沢文貴教授は「絶望的な状態に置かれた人間の生きる希望や生命力など、普遍的テーマを伝えるものであり、奇跡的に持ち帰られた希少な資料だ」と指摘した。
登録を応援しているNPO法人舞鶴・引揚語りの会理事長の谷口栄一さんは「これまで集まった署名は3万7601名。今後も署名活動を続けたい」と話す。
写真左から=抑留生活を和歌などで綴った「白樺日誌」
記念館の収蔵庫に保管されている絵画資料
抑留体験を描いた絵画
会見する多々見市長
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