市民投稿 大切にしたい『引揚列車見送りの松』 舞鶴市 池永 洋一
投稿日時:2021年01月19日(火)
“これが祖国だ舞鶴の松の緑が瞳に沁みた”
これは歌手の三波春夫さんが引揚記念館に寄贈された揮ごうです。昭和24年9月に舞鶴港に引き揚げられた三波さんは、舞鶴の松の緑の美しさに感涙されたそうです。おそらくどの引揚者の方も、舞鶴湾岸の美しい緑を目にし、帰国できた喜びを噛みしめられたことでしょう。12月18日付の本欄で、小谷要一さんが戦争の悲哀を重ねつつ、西舞鶴駅前の「引揚列車見送りの松」への思いを寄稿されました。感慨深く読ませていただきました。実は私も以前から西駅前のこの松の木が気になっていました。いつ植樹され、どなたが「引揚列車見送りの松」と名付けられたのか、知りたいと思っていたからです。舞鶴市史を調べましたが、松のことは載っていません。しかし昭和20年10月7日の引揚第一船「雲仙丸」の入港を初めとして、翌年7月までは引き揚げの中心は西舞鶴であったこと、そして舞鶴港に引き揚げられた約66万人の内の2割以上、およそ13万人余の方が西港に上陸されたことが分かりました。第2埠頭では婦人会による出迎えと、温かい湯茶や炊き出しのおもてなしが行われ、また西駅前や目抜き通りに設けられた待合室でも、婦人会による湯茶の接待が行われ、列車の見送りもされていたとのことです。おそらくこの時期に松の木は植樹されたものと考えられます。平成20年頃、西地区の有志の方々によって、この歴史ある松を守る活動がなされたようですが、今は看板も老朽化し、倒れたままになっています。多くの引揚者を見送った松は、75年の歳月を経た今、10メートルの高さに成長し、電車で通学する多くの高校生や通勤者などを見つめています。この松に目を向ける人はほとんどなく、寂しい限りですが、引き揚げの歴史を見守った松として、緑の美しい舞鶴を象徴する松として、西駅前でいつまでも元気に聳えていてほしいと願っています。
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