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多門院の伝統行事 豊作祈願の「稲の虫送り」

多門院の伝統行事 豊作祈願の「稲の虫送り」

投稿日時:2020年07月10日(金)

 松明の火に稲の害虫を寄せて海へと追いやり、豊作を祈願する伝統行事「稲の虫送り」が4日、多門院地区で行われた。今年は新型コロナウイルスの収束も祈願しながら、大人も子どもも松明を手に一列になって、川辺やあぜ道をねり歩いた。言い伝えによると、稲株に足をとられ討ち取られた平家の落ち武者、斉藤別当[べっとう]実盛[さねもり]は「覚えておれ、害虫となって田畑を食い荒らしてやる」と恨みの言葉を吐いて絶命。稲の虫送りは、害虫と化した実盛の霊を鎮め豊作を祈願するために始まったとされる。除虫手段としても、火で焼くことは実際的な効果があったため江戸期に全国各地で広まったが、誘蛾灯が普及するなど時代の変化とともに減少。同地区では昭和28年の13号台風で大きな被害を受けて以降、長く途絶えていた。地区の老人会「多門院長生会」が、とくに子どもたちに伝えたいと、子ども会との合同行事として2012年に復活させ、今年で7回目となる。この日は、午後7時に出発地の黒部地区を雨雲が通過、参加者の多くが雨合羽を着こんでの出発となった。
 大人は、竹やスギなどを束ねた長さ1~3メートルで重さ10キロほどの大松明を、子どもは竹の松明を手にした。それぞれに火を点し、祖母谷消防団が最後尾から見守るなか、先頭者の鉦[かね]を叩く音に合わせて「いーねのむーし、おーくろや。ひょうたんたたいて、おーきの島までおーくろや」「新型コーロナ、おーくろや。ひょうたんたたいて、おーきの島までおーくろや」とかけ声をあげながらねり歩く。鉦が響き渡る闇夜におよそ30本ほどの松明が揺れ動いた。途中各地区で火を引き継ぎつつ、黒部から材木、荒倉、桑飼とおよそ3キロの行程を約50人がねり歩いた。多門院橋に着くと、松明を一ヶ所に集める「納め火」を行ない無事終了した。出発から最期まで歩き通した小学生の玉林文人さん、奥野穂高さん、山本崇太朗さん、山本心琴さんらは「とても楽しかった。これからもずっとやっていきたい」と目を輝かせた。最後の挨拶で「これで多門院には新型コロナはやってきません」と笑顔で強調した多門院長生会の新谷一幸会長は「今年は天候がすぐれず朝から一喜一憂していたが、たくさん参加してくれて感謝している。こうやって育った子どもたちが行事を引き継いでくれることを願って、これからも続けたい」と話した。

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