最新の記事

  

地元あたため百年の湯

地元あたため百年の湯

投稿日時:2019年03月15日(金)

ガイド本を手にする店主の高橋さんと、徳永さん(右)

 古き良き漁師町の風情を残す吉原地区。ここ、舞鶴に2カ所残る銭湯の1つ「日の出湯」がある。100年以上の歴史の中で、地元住民の日々の営みに寄り添ってきた。近年は銭湯マニアたちにも愛されており、遠くから足を運ぶ人も多い。昨年12月に出版された温泉ガイド本「旅先銭湯」(さいろ社)には、平野屋にある「若の湯」とともに紹介された。舞鶴在住の銭湯マニア徳永啓二さん(49)と共に「日の出湯」の魅力に迫った。

 「日の出湯」の前身となる浴場は、五老ケ岳から流れる水を活用し明治期に吉原の町内が運営する公共浴場として作られた。その後「吉田屋」として個人運営となり、大正9年に高橋勝蔵氏が「日の出湯」を開業し、来年で100年目の節目を迎える。昔ながらの民家に溶け込んだように佇む「日の出湯」の暖簾をくぐると、店主の髙橋一郎さん(70)が番台で出迎える。38年間勤めた小学校教諭を定年退職し10年前から母、奥さんとともに日の出湯を切り盛りしている。高橋さんは「昔から風呂屋は大人と子どもの交流の場。大人同士が漁の話をしたり、子どもに色々教えていた。地元住民の体を温めてきた銭湯を残したいと思った」と話す。江戸時代に田辺城下町の大火により移って来た人々が作った吉原は300年の歴史を持つ。高橋さんは「今、仲間たちと共に“吉原プロジェクト300”を合言葉に地元の歴史を見直そうとしている。吉原には歴史的に値打ちあるものが沢山ある。地元の自慢できる所を再確認していきたい」と力を込める。ガイドブックの掲載については「これまでのガイドブックとは違い、銭湯を囲む地域の人々を紹介していて思わず行きたくなる。小さな風呂屋の良さを評価してもらい銭湯を営む者としては激励された。期待に応えていきたい」と笑顔を見せる。今後については「来年の100年目に合わせて何かをしたい。将来については自然に任せていきたい」と話した。

【マニアから見た日の出湯】

 古民家のリノベーションを得意とする徳永さんは通称”徳さん”と呼ばれ、古民家などを見て回るうちに魅せられた。徳さんによると日の出湯の浴槽は風呂場の中央に設置されており珍しい造り。また、風呂桶の「ケロリン桶」が黄色ではなく白色なのも他では見ないという。徳さんは「日の出湯の水質はとても良く、風呂好きの友人たちもびっくりするほど」と太鼓判を押し、「古い漁師町にひっそり銭湯が残っているのは貴重。表を歩くと街並みに溶け込んでおり風情を感じる」と魅力を語った。温泉ガイド本「旅先銭湯」(さいろ社)1296円=「日の出湯」や「若の湯」で購入できるほか、全国の書店でも注文できる。
(井上 務)

この記事をシェア!
Management BY
舞鶴市民新聞
当サイトは舞鶴市民新聞社が運営しています
ページトップへ