古き良き時代を映す 「九条の朝市」守り育んだ半世紀
投稿日時:2017年08月25日(金)
大門・八島通りの間の与保呂川沿い。朝9時半ごろになると、4台の車が並び、後ろには魚や野菜、花などが並んだ。ここでは見慣れた光景だ。東舞鶴「九条の朝市」。最盛期には川沿いを埋め尽くすほど盛況で、平成6年に全国の朝市を特集した雑誌「日本の朝市」の記事にも掲載されたほど有名だった。「九条の朝市」の“今“を取材した。
屋敷律子さん(67)は朝市で唯一の魚屋だ。この日はタイ、サバ、アジ、イカ、イシダイ、アコウなどが並んだ。店を開けるとさっそく、料理屋の店主が魚を求めて店をのぞきにやって来た。ほぼ毎日やってくる常連客だ。「その日獲れた魚ばかりで鮮度が違う。美味しい」と太鼓判を押す。1キロ以上の大きなアナゴを買って戻っていった。料理屋を営む常連が何人か去ると、一般の常連客もやってきた。羽賀田良子さん(79)は40年間通っているという。「新鮮な美味しい魚がいつでも手に入る。いつでも変わらずあるのはありがたい」と話し、魚の調理法や世間話で盛り上がる。田井出身の屋敷さんは昭和60年から父の跡を継ぎ、50年以上にわたり朝市で魚を販売している。父が亡くなった時、一時は販売を辞めようと思ったが、多くの客から続けて欲しいとの要望があり跡を継いだ。店を出す月曜日から金曜日まで、魚の獲れる日は毎朝六時に田井漁港へ車で行き、水揚げされた魚を買い付け、九条朝市で販売している。一人暮らしの高齢者などのために魚は1匹から、野菜は1本から購入が出来る。要望があれば配達もするという。先代からのお客も多く、地域に支えられている、と感謝している。「昔は飛ぶように売れた」と話すのは福井県高浜町から来ている米谷芳子さん(77)だ。40年にわたり朝市で店を構え野菜を販売してきた。米谷さんは「今は本当にお客様も少なくなったし、同業者も減った」と過去を振り返る。それでも、米谷さんのゴボウと里芋は根強い人気を誇り、店を出さないと電話がかかってくるという。「お客様の声がある限り、体が元気なうちは続けたい」と力強い。屋敷さんは「今は若い人は魚を食べないし、調理をしない人も多い。魚獲量も減り、売り手も減った。大変だが、地元の魚や野菜が買える場所を守っていきたい」と話す。かつての賑わいを失った「九条の朝市」、しかし港町舞鶴ならではの原風景が今も確かに息づいている。
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