医療現場に感謝を込めて~(引土)水嶋さん 舞鶴日赤に100万円を寄付
投稿日時:2020年06月23日(火)
引土に住む水嶋喜代美さん(73)が15日、舞鶴赤十字病院(西田和夫院長)に個人で蓄えた100万円を寄付した。水嶋さんは「コロナで大変な医療現場で役立ててほしい」と話している。
水嶋さんは88歳になる姉の付き添いで度々同院を訪れているというが、「待合室の様子などが目に見えて変わってきた」と、緊急事態宣言が発出されたころを振り返った。舞鶴市内では感染者は出ていないが、診察に訪れる人は明らかに減っていると感じていた。その中で、対応に当たってくれる医療従事者たちの優しく明るいふるまいにいつも心を揺り動かされ、水嶋さんは次第に「自分に何かできることはないだろうか」と考えるようになったという。考えが固まったのは5月17日。73歳の誕生日だった。これまで生きてこられたことへの感謝の気持ちが沸き起こり、「死ぬまでに何か人の役に立って恩返しがしたい」と決心した。54年もの長きに渡って営んできた魚屋は代替わりし、自身は隠居生活。長く商売させてもらった舞鶴の恩に報いたいという気持ちもあった。そして迎えた当日。水嶋さんは「終活のひとつが達成できてうれしい」晴れやかな顔を輝かせた。寄付金を受け取った西田院長は「大変ありがたい。今回の新型コロナウイルス感染拡大により、当院が様々な方の善意によって支えられていることを改めて実感している。いただいた寄付金は、地域住民の医療のために有効に活用したい」と話した。
【幾多の苦難 まわりの助けで 乗り越えられた】
綾部市で生を受けた水嶋さんは、9人きょうだいの末っ子だった。父は水嶋さんが誕生してから40日後に病死した。48歳という若さでの、早すぎる死だった。一方、母もまた小学1年生の時に亡くなり、水嶋さんは年の離れたきょうだいに育てられた。生活は日々苦しかったが、福祉事務所の人たちに臨海学校に連れて行ってもらうなどして、周囲の助けを得ながら成長した。生まれ育った家が火事に見舞われたこともあった。このように幾度となく降りかかった苦難にも何とか耐え忍び、水嶋さんは長じて魚屋の仕事に就いた。以来長らく、多くの顧客の支持を受けて魚屋の経営に勤しんだ。大病をすることもなく古希を超え、父の生きた年齢を大きく上回り、存分に人生を謳歌してきた。「今はいい世の中になりました。私たちがこうして元気でいられるのも、精いっぱい職務を全うされる医療従事者の皆さんの頑張りのおかげです。私にできることはわずかですが、少しでも役に立てればうれしい」と水嶋さんは笑顔を見せた。善意のともし火が、やがて誰かの命を輝かせる礎になることを願いたい。
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