動き始めた地域の歯車~余内ましみず振興会・40年越しの夢をカタチに
投稿日時:2021年05月07日(金)
市が力をそそぐ多世代交流施設「まなびあむ」の開館が目前に迫っている。人口減少の一途をたどるわが国において今、目指すべきは多世代交流がつくる地域共生社会の実現。完成する施設へ足を運ぶのも悪くない。しかし、馴染み深い地域に憩いの場所があれば、どんなに素晴らしいことだろうか。地域づくりに取り組む余内ましみず振興会(瀬野一雄会長=79=)がこの春、思いを形にするべく新たな一歩を踏み出した。
余内ましみず振興会は、同地区に住む有志らによって令和元年に発足。「安心安全で楽しく暮らせる地域づくり」「子どもからお年寄りまでが余内への愛着と誇りを持ち、希望を持って住み続けられる地域づくり」を目指す。地域内の歴史を学ぶ歴史講座・児童とのグラウンドゴルフ交流会・(北野神社横)天王山の公園づくり・天神祭での子ども太鼓促進、と大きく分けて4つの事業を柱としている。その中の一つ、天王山の公園づくりへ向けた第一歩として進めていた遊歩道の階段がこのほど完成。春の陽気に包まれ始めた3月下旬頃、北野神社境内に集まった余内小児童や関係者らは、登り初めを行うなど階段の完成を喜んだ。まだ新しい山肌の感触を足で確認するように子どもたちは、一歩ずつ山頂へと続く階段を踏みしめ、元気な声を響かせながら笑顔を見せた。
【先人らの『夢』実現へ】
“天神山を余内の自然公園にしよう!”そんな希望に満ちあふれた文言が躍るのは、昭和56年の育友会(現PTA)機関紙あまうちの1ページだった。そこには「問題が山積しているが、実現すれば本当にすばらしい」と、地域や子どもへ向けた願いが綴られていた。今からおよそ40年ほど前の地域住民らが思い描いた公園づくり。これを目にした同会員たちは、「かたちにしよう、やってみよう」と事業に取り入れることを決めた。公園づくりを前に同振興会は、新たに会内に天王山整備部会(小和田清二会長)を立ち上げた。副部会長は“山のプロ”として会員らが全幅の信頼を寄せる田中三義氏が務める。登り口の階段づくりに着手したのは昨年10月。予算はなくお金はかけられなかったが、地域に対する思いなら存分に注ぐことができる。手探りで山の整備を始めた会員たちは、少しずつ木々を伐採するなど作業を進めた。伐採した木は階段づくりに活用。杭を支え木づちを振り下ろし、協力しながら一段ずつ丁寧に仕上げていった。生い茂った草木の整備に加え、今年の冬は降雪量が多かったことから倒木にも悩まされた。「まずは動かんとどうにもならへん」そんな思いで取り掛かったという会員らの平均年齢は70歳を優に超え、最高齢は85歳。無理は出来ないが、体力の許す限り汗を流した。
いつものように黙々と山で作業をしていたある日、興味深そうに子どもたちが近づき声をかけてきた。何をしているのか話すと興奮した様子で子どもたちは「ぼくは秘密基地つくる!」「ここでこんなことして遊ぼう」と次々に案を出し合い目を輝かせたという。そんな姿が、また大きく会員たちの背中を押したのは言うまでもない。子どもたちの喜ぶ姿を励みに取り組む会員たちは「これは最後の置き土産や」と笑顔を弾けさせる。瀬野会長は「ここは深い山のような危険はなく山遊びに適している。楽しみにしてくれている子どもたちのためにも頑張りたい。ゆくゆくはブランコなんかも作りたいし、雨宿りが出来るような小屋もできれば」と今後の展望を口にする。公園づくりへの挑戦はまだ始まったばかり。地域の歯車はゆっくりと、しかし着実に回り始めた。その行く末を期待せずにはいられない。
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