共に漕ぎ出し新たな飛躍を~恒例行事にOB・OG集結
投稿日時:2020年01月10日(金)
長年の伝統が息づく学校運動部にとっても、少子化の波が押し寄せている。昨年3月には、府下有数の歴史を誇った舞鶴高専ボート部が部員減少により存続できなくなり、廃部に追い込まれた。そんな中、創部36年になる東舞鶴高ボート部が恒例の初漕ぎを行い、元気よく新たな年のスタートを切った。
2日、浜の舞鶴漕艇センターに東舞鶴高ボート部の関係者らが集まった。案内しなくても覚えやすいようにと、毎年決まった日時に開催される初漕ぎ。開始時間の午後2時前には、同部のOB・OGらが次々と集まり始めた。「教え子らと再会できるこの日が、毎年楽しみで仕方ない」と笑顔を見せるのは、同部顧問を務める多村巧さん(58)だ。多くの参加者たちが多村さんのもとに駆け寄り、再会を喜ぶ笑顔の花が咲く。「東高ボート部はひとつのファミリー。みんなが力を合わせて現役の選手たちを支えてくれている」と賑やかな一団を前に、多村さんは目を細めた。与謝野町出身の多村さんは、宮津高でボート競技を開始。その後大学卒業を経て教員となり、最初に赴任した東舞鶴高で指導者の道を歩むことになった。「ボートは単純な競技だが、奥が深い。何より海の上の爽快感がたまらない」と競技の魅力を語る多村さんは、31年間の長きに渡ってその魅力の伝道師として過ごしてきた。現在は後進の指導者も育ち、この環境にあっても部員数も安定的に推移している。だが、備品等の購入に多額の資金が必要なボート部は、ひと時も支援の手を弱めることはできないという。
【卒業生らの思いも乗せて】
同部には現在19人の部員が在籍。昨秋開催の全国高等学校選抜ボート大会近畿ブロック予選では、女子ダブルスカルで野里常なづなさん(2年)、倉内紗弥さん(2年)が2位に入り、3月に浜松市で開催される全国大会への出場を決めるなど、府下強豪校としての地位を確かなものにしている。そんな後輩たちにエールを送ろうと、初漕ぎ当日には同部OB・OGらがおよそ40人集まった。5艇のボートが合図と共に一斉スタートし、部員たちが往復約1kmのコースを力強く漕ぎ切ると、同センターは大きな歓声に包まれた。「後輩たちの姿を見ると、ここでの日々を思い出す」と昨年までの選手生活を振り返り、ジャロ潤さん(19)は感慨深そうな様子で海を見つめていた。現在は自衛隊で任務に就くジャロさん。「体力を使う仕事だが、今のところ一度もボート部より大変だったことはない」と笑顔を見せた。その後行われた懇親会では、部活動の近況報告などがあり、参加者らは熱心に耳を傾けた。中でも、現在計画が進んでいるという「創部35周年記念艇」購入のための募金が呼びかけられると、参加したOB・OGらは次々と募金箱に私費を投じていた。昨年開催された同周年記念祝賀会の世話役を務めた矢野善之さんは、「我が子もそれぞれの進路で部活動にまい進しているが、部の存続が危ぶまれるケースが増えている。400人を超える東高ボート部のOB・OGたちが力を合わせて、現役選手たちを盛り上げていきたい」と話した。OBでもある同部監督の竹本愛太さん(28)は、「皆さんの声援が選手の励みになる。見てもらうことの少ないスポーツなので、こうした機会を力に変えて頑張ってもらいたい」と話した。連綿と続く部活動への愛着の歴史。熱いタスキを受け取った選手たちの更なる活躍を期待したい。
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