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京都DWAT 福祉ケアで被災地支援

京都DWAT 福祉ケアで被災地支援

投稿日時:2019年03月01日(金)

黄色のビブス(制服)を着た舞鶴・綾部のメンバー。被災地ではこの姿が目印となる

 災害時に避難所などで高齢者や障害者らの支援にあたる災害派遣福祉チーム「DWAT」(ディーワット)。熊本地震や西日本豪雨の被災地では、専門性を生かした福祉ケアで二次被害の防止に力を発揮した。京都での発足は全国でも2番目の早さだったが、府の担当者は「認知度はまだ低く、多くの市民に知ってもらうことが必要だ」と話す。大規模災害が発生した際、被災者の命を福祉で支える「京都DWAT」を取材した。

 「DWAT」は、災害発生直後に現場に赴く医療チーム「DMAT」の福祉版。名前はDisaster Welfare Assistance Teamの頭文字。平成23年の東日本大震災以降、災害時の早期福祉支援の必要性が高まり全国で動きが広がった。25年に岩手が全国に先駆けて発足。続いて京都、群馬、静岡、青森などが次々と設置した。社会・介護福祉士やケアマネジャーなど福祉専門職員から構成される。災害時に避難所運営などに携わり、要配慮者のニーズを聞き取るなどして福祉の観点で様々な課題に対応する。「京都DWAT」は28年3月に発足。府内の地域ごとに12チームが編成され、現在132人がチーム員として登録している。大規模災害の場合、都道府県間による広域支援も可能で、「京都DWAT」は発足からこれまでに2回の派遣実績がある。最初の派遣は同28年の 熊本地震。19日間にわたり同県益城町へ計15人が交代で現地へ入った。避難所で福祉相談コーナーの設置したり、衛生環境改善のため靴箱を子どもたちと一緒に作るなどし、被災者の心のケアに繋げた。昨年の西日本豪雨では、25日間にわたり岡山県倉敷市に計24人を派遣。避難所の環境改善や、なんでも相談室の設置、視覚障害者への寄り添い支援などのほか、「医療」「保健」「福祉」の各チームが連携し避難者の健康管理を実施した。

【認知度を高めることは最大の使命】

 介護福祉士の佐々木明彦さん(51)=綾部市=は、京都DWATとして熊本と岡山への派遣経験を持つ。熊本では多くの人材と物資が集まっていたにもかかわらず、避難所の運営機能は麻痺。必要な人に物資が届かない状況が続くなど、現地での大混乱に直面。加えてDWATの認知度はほとんどなく、「なかなか現地の人に受け入れられず、避難者との信頼関係の構築が第一だと感じた」と振り返る。一方、岡山では「岡山DWATが先行して支援活動を広げており、周囲の認知も高かったことでスムーズに活動できた。また、各班に熊本の経験者が入り、その経験を生かしながら現地を良く知る岡山DWATと連携を取りながら活動し、うまく後続チームにも引き継げた」と話した。佐々木さんは「経験を積んできたことで、京都DWATとしての役割が見えてきた」とする一方、「DWATの存在が避難者に周知されていることは最も重要だと感じる。“黄色のビブス(制服)を着た人に相談したら何かしてくれる“という意識があれば避難所に安心感が広がる。そうなれば全然違ってくる。”知ってもらうこと“は、我々の最大の使命だ」と話した。

【広がる広域支援ネットワークと課題】

 大規模災害時の都道府県間の広域福祉支援体制である「広域支援ネットワーク」が広がっている。現在、7都道府県がすでに構築しており、13県が構築中、もしくは構築予定となっている。近畿圏でも奈良県以外は構築済もしくは構築中だが、府の担当者によると「DWATのような災害福祉支援チームがある自治体は近畿圏では京都府のみ。全国で派遣体制が整っている県は数県」に留まっている。府介護・地域福祉課の宮村匡彦副課長は「DWATの体制はまだ全国規模で整っておらず、近隣との迅速な連携体制を構築するためには、全国化が必要だ」と話した。
(井上 務)

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