亀裂の責は何処に
FMまいづる・市の責任転嫁に反発
住民監査請求棄却の中継局問題
市側の答弁で「名誉棄損」
投稿日時:2022年06月24日(金)
住民監査請求が棄却された「FMまいづる中継局問題」で、同局を運営する一般財団法人有本積善社(有本圭志理事長)が18日、市に申し入れ文書を提出し回答を求めた。20日に受け取った市からの回答を不服とする同財団は、「市議会6月定例会での市側の答弁で名誉を棄損された」とし、この件での対決姿勢を鮮明にしている。
市が全額を国からの補助金で賄って設置した「FMまいづる」の加佐中継局が使用できず、市の財源で新たに設置し直した件をめぐり市民4人が行った住民監査請求は、5月25日に棄却が決定。市民らは、「中継局設置工事が完了しても加佐地区にFM放送を聴くことが出来なかったのは、基本設計と詳細設計を受託した建設技術研究所の設計成果物に契約不適合があったためであり、市設計業務等委託契約約款に基づきその対策に要した費用は同社に請求するのが筋。それを請求せず市の税金を使う事は大きな損害で、市の代表である多々見市長は同社に損害請求すべきだ」と訴えたが、完全に退けられた。市監査委員は「無線局の設置工事は、試験電波を発射しなければ実際の電波の状況を把握できない不確定要素があり、建築工事と比べて特殊で基本設計等に瑕疵があるとまではいえない」と結論付けた。
この件に関して15日、鴨田秋津市議が舞鶴市議会一般質問で質問したところ、答弁に立った川端常太市長公室長が再三にわたり「(無線回線での送受信は)FMまいづるからの強い要望だった」と答弁。これに対し同財団は申し入れ書で「基本設計で有線回線が決定していたものに対し、当財団から設計変更を強く要望したという事実は一切ない」と強く反発。「当財団がボランティアで協力した技術的助言行為を受信トラブルの原因のように誇張して表現することは道義的に許されることではなく、当財団と舞鶴市の一切の信用を失うもの」と糾弾し、川端公室長の一連の発言に対し撤回、訂正を求めた。
【郷土の発展願い90余年】
長年にわたり慈善事業を行ってきた有本積善社は、昭和2年(1927)に旧舞鶴町の出身者である故・有本国蔵氏らにより設立された。同氏は大阪で実業家として財を成し、後年は当地に多額の寄付を繰り返した。寄付金によって建設された公共施設などは多岐に及び、建設資金を提供した舞鶴公会堂は1982年に取り壊されたが、跡地にある舞鶴市役所西支所の2階にはその功績を伝えるための有本国蔵記念館があり、建物入口脇の敷地内には銅像がある。
その有本積善社が市民からの強い要望に寄り添って生まれた「FMまいづる」は今、コミュニティエフエムの枠を超え市民の安心安全を支える情報インフラの役割を担っている。
互いに信頼しあう関係であるべき両者に生まれた深い溝。20日に多々見良三市長名で出された回答書には、「実際に電波を発することができない中、関係者が協力し、最善の方法が検討された結果であり、特定の者の責めに帰す考えはない」などと、これまでの立場から何ら変わることのない内容が記されていた。
回答を受けて同財団は「施工前に設計会社の作成した設計では無線回線受信トラブルに至る可能性があると指摘していたが、市広報広聴課は工期を理由に指摘事項を軽視し、免許申請を速やかに行うよう指示した」との見解を主張。「事実と経緯について関係資料を公開し、自ら名誉を回復する」としている。
契約通りに成果物が得られなかったにもかかわらず、「特定の者の責めに帰す考えはない」との立場を変えようとしない舞鶴市は、そうした事態に陥った責任をも運営会社に押し付けている構図となっている。そうしてまで、市が守ろうとしているものは一体何なのか。それが市民の命と財産であるとは、今のところ到底考えることはできない。
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