中国で高まる需要 舞鶴湾のナマコ増殖へ 京大水産実験所 種苗生産技術の研究進める 1月下旬に稚ナマコ放流、生育環境調査も【舞鶴】
投稿日時:2011年01月14日(金)
経済発展が著しい中国で高値での需要が伸びているナマコに着目し、舞鶴湾のナマコ資源を増やそうと、舞鶴市の委託を受けて長浜の京都大学舞鶴水産実験所の研究グループが、湾内での天然採苗(さいびょう)と種苗(しゅびょう)生産の確立に向けて研究に取り組んでいる。実験施設で育成してきた稚ナマコを1月下旬には放流する。今春から舞鶴湾での親ナマコの分布状況や最適な生育の環境調査も実施する。 国内でのナマコ消費は減っている一方で、元々中華料理で高級食材だった中国では、富裕層の増加で乾燥ナマコが健康食品として需要が高まっている。大連では1キロが10万円~25万円で販売されているともいう。そのため日本から中国へ輸出する乾燥ナマコが急激に値上がりしている。 舞鶴湾でのナマコ漁獲量は1970年には約290トンだったが、資源量の減少なども影響し2007年は約80トンにまで落ち込んでいる。しかし、府全体の漁獲統計では08年、ナマコの水揚げ金額は約1億円を占めた。 舞鶴水産実験所の山下洋教授らのグループが、09年10月から青ナマコの増殖を目指し研究をスタートさせ、今年度は放流のための稚ナマコを確保する方法として、自然に稚ナマコを集める採苗と人工的に育てる種苗生産技術の研究をする。 天然採苗は湾内14カ所にカキ殻を入れた網の採苗器を水深2メートル付近に設置。天然ナマコが産んだ卵から孵化した幼生がカキ殻に付着し、約半年間で稚ナマコに成長した。場所などの条件の違いで100匹いた採苗器もあった。 種苗生産の実験は産卵誘発剤で親ナマコから受精卵を採集し、孵化した幼生をエサのやり方などを変えて飼育。波板(45センチ四方)を使った採苗器に藻を付着させ水槽に入れて世話を続け、育った稚ナマコを屋外や施設内などの異なる水槽で飼育を続け、大きなもので体長15センチまでになった。 実験を担当する研究員の大島真兼(まさかね)さんは「屋外の水槽の方がよく育つのは、太陽を浴びて波板に藻類がよく付き、それをエサにしていることが考えられます」と話す。今後、実験所前の海底にカキ殻を敷き詰めたカキ礁を造り、飼育する稚ナマコ約3,500匹を放流し定期的に追跡調査する。 山下教授は「舞鶴湾でナマコはどんな場所に生息しているのか、生育に好適な水温や溶存酸素などの海洋環境を調べ、資源管理について提案し、最終的には生産技術を漁業者に移転できるようにしたい」とする。研究は12年4月まで続けられる。
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