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まちへの想いが未来をひらく 観光振興 次の一手は原点回帰

まちへの想いが未来をひらく 観光振興 次の一手は原点回帰

投稿日時:2017年10月06日(金)

 平成30年に交流人口を約300万人まで増やすことを目指し、市は様々な施策を展開している。今年度はクルーズ客船寄港の大幅増加など一定の成果が見られるが、市民には実感が乏しいとの声も多く、課題は山積している。観光に重点を置いた街の「いま」。様々な立場で奮闘する人たちを追った。

【数字の伸びとは裏腹に】

 市が毎年発表する観光入込客数は、ここ数年増加の一途をたどっている。平成23年の調査で約141万人だった数値は、平成28年には約240万人と、5年間でおよそ100万人の劇的な増加を記録した。増加の背景には、高速道路網の開通や舞鶴引揚記念館の世界記憶遺産登録など、ハードやソフトの充実が挙げられる。そこで気になるのが、観光入込客数の積算根拠である。この数字は、五老岳や舞鶴赤れんがパークなどの施設への来場者数や、市内の海水浴場やキャンプ場などの利用者数、まいづる田辺城まつりやみなと舞鶴ちゃったまつりなどのイベントにおける主催者発表の来場者数など、合計29ある項目の積算数となっている。平成28年度の結果と同27年度の結果を比較すると、29項目中で増加が13項目、減少が13項目となっており、約16万人の増加を記録した舞鶴赤れんがパークの健闘が際立っている。言葉を返せば、同パークに偏ったものであり、「観光客が増えている実感がない」と口にすることが多い西地区住民の言葉にも頷ける。この結果について市観光商業課の櫻井晃人課長は、「メディアに取り上げられたり、周知が行き届いてきた」と胸を張る一方で、「点での戦略には限界があるので、体験型のコンテンツを充実させるなど、出来る限り滞在時間を延ばす努力をしていきたい」と課題を口にする。

【新たなコンテンツを】

 そんな中、西地区で新たな観光コースを開発する動きがある。8月16日、「吉原の万灯籠」開催に合わせて、同地区のまち歩きをするイベントが開催され好評を博した。同地区は在京メディアや海外のブロガーなどに、ことさら評判が良いという。当日は20人の参加者らが「東洋のベネチア」に例えられる漁師まちを、地区の人たちの案内のもと散策した。吉原太刀振保存会の会長を務める山尾清明さん(69)は、「年々高齢化が進む地区ににぎわいが出るのはうれしい」と笑顔を見せた。櫻井課長は、「点ではなく線になる周遊コンテンツは、むしろ西地区の方が組みやすい」と話し、今後の展開に意欲を見せた。

【「好き」が原点】

 一方、市民による活動も静かな盛り上がりを見せている。9月24日、ボランティア活動をすすめる集い「Xにチャレンジ~見つける・楽しむ・まち歩き~」が開催された。当日は28人が参加し、市民グループ「KOKIN」の大滝雄介代表(35)の講演の後、平野屋商店街を中心にまちを歩いた。市内で工務店を経営する大滝さんは、進学・就職で当地を離れたが、父の病気を機に帰鶴。Uターンして改めて「自分のまち」を好きだと思えるようになったという。とりわけ西地区の街並みに魅力を感じ、仲間と共にレンタルスペースの運営などに精を出す日々。「まちづくりなどという大げさなものではなく、ただ自分たちがまちを楽しみたい」と話す大滝さんは、大好きだという「若の湯」で、参加者たちにその魅力を熱弁した。「地元の人が愛してやまない風景や人情」。作り物のテーマパークにはないオリジナルの魅力である。当地が観光での地域振興を進めていくならば、成否を分ける鍵はまちを想う「好き」の気持ちに他ならない。華々しいハードの出現よりも、まちへの愛着の広がりに期待したい。

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