はばたけ 舞鶴のものづくり~福来の三葉商事 蝶ネクタイを商品化
投稿日時:2019年11月15日(金)
超高齢化社会に突入した我が国にあって、労働人口の減少は今後大きな社会問題になると確実視されている。そんな中、国は女性の活躍が今後の社会において大きな鍵を握ると位置づけ、6月には女性活躍推進法の改正法が公布された。しかしその一方で、社会が変革に向かっている実感が乏しいという声も上がってはいるが、当地でも時流を捉え「女性の力」を社業発展の推進力にしている企業がある。
福来の三葉商事(山下武志社長)は昭和39年創業で、刺繍を主とした縫製加工の老舗。下着や子ども服などの刺繍をグンゼなどの有力企業から請け負い成長し、最盛期のバブル期には大阪にも営業所を出すなど活況に沸いていた。しかし90年代に入ると、ものづくりの中心が中国に移り、圧倒的な価格差で苦境に立たされた同社は劣勢を強いられることになる。先代社長の故・山下正二さんが掲げた創業の精神は、「雑草クローバーのような会社づくり」。決して大輪ではないが、けなげで愛らしいクローバーの花のように、顧客に笑顔と感動を届け続けるという思いが込められているという。産業構造の大きな変化に翻弄された同社だったが、創業の精神を忘れることなく雌伏の時を耐え忍び、勇躍の機会をうかがい続けた。
【舞鶴から世界へ】
21世紀に突入し、インターネット通販が急速な広がりを見せる中、同社も新業態への挑戦を始めた。2006年のことである。同社は刺繍の技術を生かし、小ロットで作成する個人客向けの「お守り袋」の販売を開始し、この挑戦を契機に社業再興の狼煙が上がった。その後、山下社長の次女である五十嵐絢加さん(31)と長女の石川智加さん(33)が会社に加わり、若い女性のニーズをしっかりと捉えた商品・サービスを次々に開発。現在は、20人を超えるスタッフを抱えるまでに会社は成長した。「そもそも刺繍はなくてもいいもの。それが必要とされるには相応の付加価値が不可欠」と智加さん。その考えに共鳴したスタッフたちが女性ならではの感性で生み出した商品が同社の躍進を支える。この秋、同社の誇る女性スタッフたちの思いが詰まった新商品が誕生した。「me.dery(エメデリー)」と名付けられた蝶ネクタイだ。「私らしさ」を意味する造語だという商品の開発コンセプトにおいて、まず根底にあるのは「刺繍のすばらしさを伝えたい」という思い。「毎日刺繍と向き合う私たちしか知らない、素晴らしいステッチや表現の数々を、もっと皆様に「彩り」としてお届けしたい」と二人は笑顔を見せた。同商品はクラウドファンディングへの出品でも好評を博し、今後の量産化へ向けて同社の挑戦は続く。舞鶴から世界へ。小さいながらも世界で通用する技術者集団を目指す同社の今後から目が離せそうにない。
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