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「自助・共助」の理想像<br>丸田東地区・住民独自でコミュニティ無線放送を実現<br>28戸を無線でつなぐ最先端のシステムを自主財源で整備

「自助・共助」の理想像
丸田東地区・住民独自でコミュニティ無線放送を実現
28戸を無線でつなぐ最先端のシステムを自主財源で整備

投稿日時:2022年12月23日(金)

 2004年に発生した台風23号では由良川が氾濫し、丸田東地区を含む市内各所は甚大な被害に見舞われた。バスが立ち往生し全国的に注目を集めた大災害により、行政は様々なインフラ整備に乗り出したが、同地区ではそれ以前から「自分で自分の身を守り、隣近所と助け合う」という「自助・共助」の意識が住民間に浸透している。
 その実践が、昭和54年から運用している地区内放送だ。各家庭に設置されたスピーカーと放送設備を有線でつなぎ、発信する端末は区長及び農事組合長が管理。各家庭への注意喚起やゴミ当番、慶弔連絡などに使用していた。
 しかし、近年では経年劣化により設備の破損などが相次ぎ、積雪によって線が切れた時などには、切断箇所を特定するだけで大変な手間がかかったという。
 そうした経緯もあり、地区では今年はじめの集会で設備の更新を決議。全住民の承諾を得て設備更新事業に着手することになった。費用はおよそ300万円。補助金などは一切使用せず、地区住民で貯めてきた有線積立・災害積立・公民館積立を充当。まさに、住民独自の「共助」事業への取り組みが始まった。

ラジオを聞くことも出来る受信機を手に無線放送の開通を喜ぶ千坂区長(左)と嵯峨根専務
集会所で新たな放送機器を操作する千坂区長

 【画期的なシステム 地元事業者が施工】
 「地元業者として、何とか役に立ちたかった」と話すのは、施工を請け負った弥栄電設工業の嵯峨根隆史専務(39)。こうしたシステムの施工経験はなかったが、「費用を最大限抑え、画期的なシステムを構築することが出来ました」と胸を張った。
 今回の無線放送システムの機器は、鹿児島県のメーカー・芝浦電子工業のもの。「台風のメッカ」に本社を置く同社ならではの工夫が詰まったシステムだという。
 これまでは、家人の在宅可能性が高い時間帯に合わせて放送していたが、新システムでは録音機能があることで帰宅後聞くことも可能に。また、行政放送も連動しており一つの端末で合わせて受信することが出来るようになった。これにより、屋外スピーカーから遠い家で聴き取りづらいという問題も解消した。
 また、これまでは固定の放送設備から行うしかなかった放送に関しても、スマホからの操作が可能になった。集会所に設置する本体を水没する恐れのない高所に置きさえすれば、災害時でも安全な場所から呼びかけることができるようになった。加えて、携帯型の無線非常通報機を別途入手すれば、各家からの発信も可能に。この双方向の通信で各家から危険を知らせることが出来るようになり、より一層「共助」機能の強化が実現した。
 現在28戸で構成する同地区の千坂和明区長(47)は、「これで、住民との連絡がより円滑に取れるようになりました。皆さんの安心安全を守るため、しっかりと運用していきたい」と笑顔を見せた。
 「公助」にのみ期待するのではなく、「自助・共助」を強める同地区。自立した自治会の姿は「災害に強い地域」のモデルケースになるのではないだろうか。

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