親子二代で金字塔
かわらふき工で「現代の名工」に
鍛錬の日々40年・こだわり抜いた職人の美学
投稿日時:2022年04月05日(火)
かわらふき工に従事して40年になる田中富美夫さん(62)がこのほど、京都府優秀技能者表彰に輝いた。
市内の同業者から2人目となる受賞は、亡き父に続く親子2代での「現代の名工」の誕生でもあった。
京都府では、職業技能の向上と技能尊重気運の高揚を図り、技能者の励みとすることを目的として、京都府優秀技能者表彰制度を実施している。この制度は、伝統産業を除く府内の各産業分野で、最高の技能を発揮して産業発展のために貢献している人を京都府知事が表彰するもので、昭和61年度に始まった。表彰受賞者には、技能の継承と人材の育成を一層推進するために、「京都府の現代の名工」の称号を授与することとしている。
今年度の受賞者は、26人。舞鶴市内から唯一の受賞となった田中さんは、昭和56年に家業である田中瓦工業所に入社。同時に京都瓦技術高等職業訓練校に入校し、技術を学んだ。
熟練した高い技術を要する「一文字瓦」の施工を得意とする田中さんは、これまでに様々な技術コンクールで入賞。平成8年には、熟練技能を競う全国規模の技能競技大会である「技能グランプリ」の建設部門で、最高賞の内閣総理大臣表彰を受賞。それ以降は、その技術力の高さから、技能検定受検者講習会の講師や技能検定委員として後進の育成にも尽力している。
【父の背中を追いかけて】
田中さんの父、英郎さんは30歳で会社を創業。昭和40年のことだった。物心ついた時から、瓦葺き職人に囲まれて育った田中さんは、自然と職人への道へと進むことになった。
折からの住宅ブームに乗って会社は成長を続け、様々な現場を経験する度に英郎さんの技術も向上。市内のかわらふき工で初めて「現代の名工」の称号を授与されるなど、大いに活躍した。
そんな父の背中を追いながら、田中さんも日夜鍛錬を重ねた。師と仰ぐ先達から示された「報酬に恥じない仕事が出来る職人になれ」との教えを胸に、技術の向上に努めた。
名工であることの秘訣を田中さんに問うと、返ってきたのは「手先の器用さよりもこだわり抜く気持ち。まあ、これでいいかと妥協することなく、常に最善を目指す気持ちの強さだと思う」との答え。追い続けた父の背中から学んだ「職人の美学」だ。
父の英郎さんは、3月9日に87歳の生涯を閉じた。今回の表彰式の2週間前のことだった。しかしながら、「受賞の内示は父に伝えることが出来た」と振り返る田中さんは、「とても嬉しそうにしてくれました」と笑顔を見せた。
創業時から大きく様変わりした住宅業界。その中で瓦工事を取り巻く環境も激変したと話す田中さんは、「いずれにしても、私たちの仕事はずっと後まで残る。『現代の名工』に恥じない仕事をしていきたい」と力を込めた。


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