市内在勤の公務員・浜谷さん(宮津市由良) アドルノ哲学『否定弁証法』の概説書自費出版【舞鶴】
投稿日時:2006年10月06日(金)
市内に在勤する公務員の浜谷直隆さん(54)=宮津市由良=が、ドイツの哲学者テオドール・W・アドルノの『否定弁証法』(作品社)の概説書である『アドルノ 非同一性への憧憬』(東京図書出版会、167ページ)を、このほど自費出版した。15年の構想を練り、1年半かけて執筆した。想像力を放棄し、精神の退行に陥る人間への警鐘を鳴らし、主観の力の復権を唱えたアドルノの思想を紹介する。 和歌山大学経済学部に在籍中、歴史を科学的に解き明かすマルクスの著作に触れ、哲学に関心を向けた。30代のころ、アドルノとマックス・ホルクハイマーの共著『啓蒙の弁証法』に出会って感銘。続いて『否定弁証法』を読み、ナチズムが席巻し、戦争最中の1945年前後の世界の姿を分析しようとする彼らの思想に共鳴した。 ユダヤ系のアドルノは1903年~69年に生き、第2次世界大戦中にドイツからアメリカへ亡命。主著の『否定弁証法』は、研究者の間で20世紀の古典として評価されている。が、概説書がほとんどないことから、自分で書こうと挑戦した。3度読み返し、休日に執筆して400枚を書き上げた。500部発行した。 ホルクハイマーらによる、ドイツの大衆が容易にナチズムに陥ったことの指摘や、主体的な判断力を喪失し、どの情報が利益をもたらすかだけを考える理性の道具化の進行を紹介した。浜谷さんは批判的精神はオウム真理教に見るように、以前にもまして加速度的に失われていると論評、アドルノの「哲学は知的かつ現実的な自由をめざす決断である」の言葉を引き、「人間の精神に最後の信頼をおく思想」の重要性を述べた。 浜谷さんは「アドルノらの思想は、より自分で考えることをしなくなった現代において、有効だと思う。出来上がった本は私の分身のような存在です」と話す。書店で注文して購入できる。定価は1575円(税込)。
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