命みつめて半世紀~助産師の和田さんが日星高で「誕生学」
投稿日時:2021年02月16日(火)
連日のニュースに変わらず流れるコロナの文字、更新される感染者や死亡者の数。徐々に感染が確認されはじめ、国内で最初の死者が出たのが昨年2月13日だった。厚生労働省によると、それから1年が経った12日現在の死亡者数は6774人。またコロナ状況下における自殺者数は、11年ぶりに増加に転じた。失われていく命の数に鈍感になってはいけない。いま様々な角度からのきめ細かい支援が、強く求められている。
助産師で誕生学アドバイザーの和田法子さん(72)がこのほど、日星高の1年生138人を対象に「高校生の誕生学」と題した講演会を行った。女性の社会地位向上を目指し活動する国際ソロプチミスト舞鶴(佐々木禮子会長)が、奉仕活動の一環として企画。またこの日、全員に配布した「命の大きさ」を示すカードの作成も会員が手がけている。カードには針穴・砂粒・ゴマ・米・小豆と順に並べて貼りつけてあり、命が始まる0.1mmから成長していく過程の、イメージしにくい大きさを視覚的に伝えた。講演の冒頭、和田さんは「カードを光にかざして見てみてください。針穴からわずかに見える光がだいたい0.1mm。みんなの最初の大きさです」と話した。興味深そうに光にかざす生徒らに、「小さいでしょう。でも少しずつ大きくなる準備をしているんですよ」と母親の胎内で力強く成長していく命の様子を説明。生徒らは、「こうして生まれた一人ひとりが、かけがえのない大切な命だ」という和田さんの言葉に、熱心に耳を傾けていた。思春期の生徒たちに寄り添うように話を進めた和田さん。誕生学を届けたいと思うきっかけになった、あるエピソードを紹介した。当時まだ学生だった20歳の長女が、成人式で帰省したときのことだった。元気がなく様子がおかしいと察した和田さんは「お母さんに何か話したいことがあるんじゃない」と声をかけた。するとその言葉を境に長女は大声で泣きだし「妊娠している」と告げられた。驚きや動揺が先に立ち、頭が真っ白になったという和田さん。その後、相手の家族とも話し合い、赤ちゃんは無事出産できることになった。しかし、妊娠が分かった時の長女が「どうしよう、どうやって話そう」とどんなに不安な日々を送ったのかと思うと、胸が張り裂けそうで辛かったと振り返った。
50年にわたり助産師として、多くの命の誕生に立ち会ってきた和田さん。本当なら祝福されるべき妊娠を「よかったね。おめでとう。と真っ先に言ってあげられなかった」と後悔の念を滲ませる。敬遠しがちな自身の体験談を赤裸々に語り、正しい性への知識で予期せぬ妊娠や中絶を防ぎ「よかった」で始まる妊娠をしてほしいと呼びかけた。続けて和田さんは、不妊症のリスクとして認知度の高いタバコの害より、無意識に摂取しすぎている添加物への注意が必要だと警鐘を鳴らす。若年層の死因のトップが自殺であることにも触れ、辛いときは一人で悩まず誰かに相談して欲しいと訴えた。また講演の中で、不妊治療を経てようやく新たな命を授かった夫婦が、我が子をその手に抱くまでの様子をDVDで紹介した。小児看護師を志し「将来的に子どもは3人ほしい」と笑顔を見せる田畑彩さん(15)と田村羽望さん(16)は「不妊治療の人の動画を見てはじめて、命って奇跡なんだなって思った」。道上華蓮さん(16)は「コロナ禍でDVが増えていると聞くし心配。みんなが大切にされるよう、身の周りでも困っている人がいないかなど気をつけたい」とそれぞれ話した。看護科で学びを深める3人は「命の誕生は当たり前に喜ばれるものだと思っていた」と、和田さん自身の体験談に気付くことが多く、心に残ったと口を揃えた。
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