不登校の児童・生徒のための民間教育施設 「聖母の小さな学校」卒業式、3人が巣立つ【舞鶴】
投稿日時:2007年03月20日(火)
不登校の児童・生徒のための上安の民間教育施設「聖母の小さな学校」(梅澤秀明・良子代表)で3月17日、卒業式が開かれ、3人の生徒が卒業の証の色紙を受け取った。生徒たちはこれまでの自分を見つめる苦しさを経て、自分を受け入れることができるようになった聖母での日々を「一生分以上の宝」と述べた。聖母を支える関係者も出席し、その成長を温かく祝福した。 16~19歳の男子生徒2人、女子生徒1人が卒業を迎えた。中学生のころから不登校になるなどし、聖母で約1年~2年間学んできた。公立校などのように卒業単位が決められているわけではなく、不登校の自分を直視し困難に向き合う力をつけた生徒たちを、次の道へ送りだしている。 卒業式には父母、卒業生の社会人、公立学校や市関係者ら約20人が出席。はじめに梅澤秀明さんが「1人の人間として大切なことは何かと、自分を見つめるよう教えてきた。つらいけれど自分の課題を受け止め、教わったことを思い出し進んでほしい」と語りかけ、3人に卒業の色紙を手渡した。 3人は聖母での毎日を振り返り、卒業メッセージを発表した。「先生に話を聞いてもらい楽になった。いろんな体験ができるようになって自信がついた」「がまんすることを勉強した。先生はよくいろいろな話をしてくれました」「誰も理解してくれず苦しかった。聖母でかけがえのない先生、仲間に出会えたこと、それが僕にとって一生分以上の宝です」。 そうした発表を目の前に、梅澤良子さんは聖母に来て初めて泣いた生徒の姿を思い出し、「どれだけ1人で苦しんでいたことか。自分の心を開いてくれたことを忘れません。もう大丈夫ですよ」と言葉をかけた。一緒に不登校を考えてきた生徒らの父母は、「子供を追い込んでいたりと親として学んだこともあった」とし、3人の成長に対して支えてくれた全ての人に感謝を述べた。3人は公立高校などそれぞれの道へ進む。 また、卒業式に先立ちこのほど実施した中国学習旅行の報告会もした。人前に出るのも苦手な生徒たちが旅行への希望を膨らませ、約1年かけて準備。大連での交流の様子を紹介し、3人は「文化の大きさに驚いた」「もっといろんなことを知り広い世界を見たい」と意欲を伸ばした。 「聖母の小さな学校を支える会」(川崎弘会長)は、学校の運営を支援するため募金への協力を呼びかけている。 梅澤夫妻が1989年に設立以来、200人を超える中高校生らが在籍した。基礎教科の学習のほか、体験学習も多く取り入れる。不登校の相談にも応じている。「不登校は個人的な問題ではなく、社会の歪みが表出した問題」と捉え、困難に向き合う力を育てる取り組みに、卒業生らは「不登校になってよかった」と考えるまでに成長している。 しかし、民間施設であるため運営は厳しい。授業料、宗教者や各団体からの寄付、梅澤夫妻が非常勤講師の報酬などを運営費に充てるが、不足分を同会が募金活動で賄う。2007年度は350万円を贈った。梅澤さんは「最近も匿名の寄付をいただきました。皆さんの思いに感謝するとともに力にしていきたい」と話している。
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