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西国29番札所・松尾寺の木造金剛力士像 2008年には阿形像、吽形像の修理終え2体揃う【舞鶴】

西国29番札所・松尾寺の木造金剛力士像 2008年には阿形像、吽形像の修理終え2体揃う【舞鶴】

投稿日時:2010年04月06日(火)

修理を終えた吽形像。奥は阿形像

 西国29番札所、舞鶴市松尾寺の木造金剛力士像の吽(うん)形像(高さ229センチ)の解体修理が終わり、このほど同寺宝物殿に搬入された。もう1体の阿(あ)形像は2008年に戻されており、2年5カ月ぶりに2体が揃った。鎌倉時代に制作され、長い歴史の間に積もった汚れを落とし、美しく力感ある仁王さんの姿が蘇った。解体中に文化財の研究者による調査も行われ、今後の研究発表も待たれる。市指定文化財の金剛力士像は、長年にわたって山門に安置されていたこともあり、老朽化が進んでいたため、07年10月から京都市の財団法人美術院で解体修理が行われ、先に修復を済ませた阿形像が戻されていた。2体とも手を上げていない仁王像として珍しく、研究者も注目している。檜で造られた吽形像には、表面に江戸後期に塗られたと思われる漆にべんがらを混ぜた赤い塗料を落とした後、鉄のかすがいなどで組み上げられていた500近い部材を解体した。阿形像はこの半分ほどの部材だったことから、山門が倒れるなどして吽形像の上に加重がかかって壊れた可能性も考えられるという。部材についたにかわを取り除き、鉄のかすがいも抜いたことで85.1キロから1.6キロ軽くなった。部材には化学樹脂をしみ込ませ木質を強化し、漆を接着剤にして組み上げた。また、新しく台座を作製、像の足ほぞの先端を継ぎ足し、安定して立つようにはめ込んだ。作者を示すようなものは出てこなかったが、頭部にあった墨書には「永禄3年(1560)」「慶安3年(1650)」「正徳2年(1712)」の年号があり、修復した時期を示すものとみられる。修理技師の八坂寿史さんは「1000年たっても倒れないように組み上げました。彫り口や体の構えなどから、東大寺南大門の仁王像を造った運慶、快慶の流れを汲む仏師の作ではないか。仁王像を研究する上で貴重なものだ」と話す。松尾心空名誉住職は「家族がひさしぶりに帰ってきてくれたようで胸にこみ上げてくる思いがあります。美しさと逞しさが増し、新しい歴史の心音を伝えてくれています」と2体の里帰りを喜んでいた。4月20日までの春季展観で見ることができる。
【問い合わせ】電話62・2900、同寺

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