「フツーの仕事がしたい」が国際映画祭で最優秀 土屋さん(舞鶴出身・横浜市 )監督・撮影のドキュメンタリー【舞鶴】
投稿日時:2010年04月09日(金)
舞鶴出身の映像ディレクター、土屋トカチさん(38)=横浜市=が、監督・撮影したドキュメンタリー映画「フツーの仕事がしたい」が、2008年の発表からいまも各地で上映が続き、ドバイ国際映画祭でも最優秀を受賞した。1日18時間以上働かされ、会社から暴力で労働組合の脱退を強要される神奈川県内のトラック運転手が、労働条件を改善させるまでを、土屋さんも暴力を受けながら体を張って追った。同じ境遇の人たちへの励ましとなり大きな反響を呼ぶ。全国の高校へ出前上映し、助け合うことの大切さを語りかけている。映画は、大手セメント会社の孫請けの運送会社で働く皆倉信和さん(当時36)が主人公。月550時間以上の労働でトラックに寝泊まりし、残業代も支払われないなど法律違反の元で働かされていた。個人加入できる労働組合に職場からただ1人加入したが、会社側は関係者を名乗る男を使って脱退を迫った。毎夜、自宅に押しかけるだけでなく、母親の葬儀にまで手下を連れて現れ暴力をふるって脅した。心身を壊し入院したが脅しに屈せず、労組の支援を受け親会社に問題解決に向けた約束を取り付け、事実上所属会社を廃業に追い込み、新会社で「フツーの仕事」が保障される運転手として再び働き始める。労組の依頼で土屋さんはたまたま撮影を始めたが、同年齢の皆倉さんに自分の姿が重なり、途中から自費でカメラを回し続けた。東舞鶴高校を経て新聞配達をしながら京都の大学を卒業し、日雇い派遣などをした。映像制作会社で働くが会社都合で解雇を通告され、1人で労組に入り解決金でビデオカメラを買い、以後フリーで活動という経緯を持つ。撮影中、タバコの火を足に押しつけられたり、葬儀で自身も男たちから殴られ恐怖を感じたが、それでもカメラを止めなかった。十歳で父を事故で亡くしたことから、「家族との別れの大切な時間に土足で踏み込んでくる行為が許せなかった」からだ。ワーキングプア、厳しい雇用・労働情勢が問題となる中、映画は大阪、鹿児島などの劇場のほか、年越し派遣村など各地で自主上映会も開かれ、観る人たちから勇気づけられたと反響が寄せられた。初監督作品がイギリスとドバイの映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞の評価を受けた。上映の輪はいまも広がり続け、皆倉さんと一緒に全国を回って体験を話している。また、若者たちに働く権利を知ってほしいと、東京都内の定時制高校などで出前上映もした。土屋さんは「闘わなれば何も変わらないということを体験から学んだ。命と助け合うことの大切さとととに、その実行の手段の1つに労組や労働法があることを映画で伝えたかった。舞鶴でも上映の機会を作ってもらえれば」と話す。
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