城下町の風情残したい 紺屋の山口さん、屋根の庇に鍾馗(しょうき)さま【舞鶴】
投稿日時:2010年09月21日(火)
疫鬼(えきき)や厄を祓うことで知られ、古い町に多く見られた鍾馗さまの像が、城下町だった紺屋の民家の屋根に設置されている。50年前にこの地に嫁いできた山口至江(よしえ)さん(75)が、すっかり変わった町並みを寂しく思い、少しでも昔の面影を残そうと置いた。昔ながらの町屋の家の屋根から、鍾馗さまが地域の人たちの暮らしを見つめている。 鍾馗は、唐の時代、玄宗皇帝の夢の中に現れ、魔を祓い病気を治したという故事から、疫鬼を退ける神として、屋根の庇に置いて厄払いをする風習が残っている。城下町だった舞鶴の町にも、以前はたくさん見られたという。 山口さん一家は戦時中、東京大空襲ですべてを焼失し、実家の綾部に引っ越してきた。その後長男の結婚を機にいまの家に移った。大工が仕事場兼自宅にしていた木造2階建てで、この当時で約70年は経っていた。細長い町屋ならではの間取りになっている。 手入れをして大切に住んできたが、近隣で空き地などが増え、すっかり町並みが変わった。嫁いできたころ、近所を歩くと屋根に上がる鍾馗像が気になっていたが、いまでは引土に一、西町に二軒見かけるのみに。 この家の購入を決めた母の寿賀(すが)さんが104歳で元気にいてくれており、自宅に愛着を持つ山口さんも昔の面影を残したいとの思いも重なり、1階屋根の修理に合わせて土の焼き物の鍾馗像(高さ30センチ)を置いた。 山口さんは「人とのつながりが希薄になった時代ですが、鍾馗さまを見上げてそこに込められた思いや暮らしを思い出してもらえれば」と話している。市文化財保護委員の加藤晃さんは「鍾馗像は舞鶴でも厄除けのため庇に置かれていた。城下町らしい風情があるので、鍾馗さまが増えればいいですね」とする。
写真=屋根に置かれた鍾馗像
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