高浜原発運転停止で海に異変 京大舞鶴水産実験所 益田准教授 内浦湾で潜水調査 今冬 南方系の魚貝、衰弱か姿消す 温排水の放水止まり【舞鶴】
投稿日時:2012年05月11日(金)
関西電力高浜原発(高浜町)がある内浦湾に定着する熱帯などの魚貝類に、4基の原子炉の運転停止前後で大きな変化があることが、京都大学フィールド科学教育研究センター舞鶴水産実験所の益田玲爾准教授の調査で初めて明らかになった。普通なら若狭湾にいない南方系の生物が、温排水の影響で冬も内浦湾で見られるが、停止後温排水が流入しなくなった今冬は、衰弱や姿を消したものが増えていることを確認し、温排水が海に与える温暖化の影響の大きさを浮き彫りにした。 原子炉で作られた高温の蒸気を取水した海水で冷却するが、蒸気の熱を吸収することで取水時より水温が約7度高くなった温排水として再び海に戻される。高浜原発の温排水量は1号機~4号機合わせて毎秒230立方メートル。年平均流量が毎秒42立方メートルの由良川の約5倍にのぼる。 対馬暖流に乗って熱帯や温暖帯の南方系の魚たちが近年、若狭湾でも見られるようになってきたが、水温が低下する冬にはほぼ死滅する。若狭湾から奥まった閉鎖的な内湾の内浦湾でも、多くの南方系の魚がいることがダイバーらによって確認されていた。 こうした魚たちの冬の生息状況を知るため、2004年から潜水調査を開始。毎冬1月下旬~3月上旬の4回、内浦湾と実験所前の長浜、舞鶴湾口の瀬崎の3カ所で、定点観察した生物を比較した。 内浦湾では放水口から2キロ地点の600メートル×2メートルのエリアで潜った。平均水温は長浜と瀬崎より約2度高く、音海(内浦)半島東側の若狭湾の地点と比べても同じく約2度高かった。冬場の海は魚が少なくなるが、内浦湾には毎回約20種の魚類を確認し、そのうち半分は南方系のものだった。 高浜原発1号機が2011年1月10日に、4号機が7月21日、2号機が11月25日、3号機が2012年2月20日に定期検査に入って運転を停止。これまで内浦湾の海水は12度を下回ることはなかったが、温排水が放水されなくなった今冬は約10度にまで下がった。 インド方面などに生息するカミナリベラは長浜では見られず、瀬崎には2005年2月9日に1匹いただけだった。内浦湾で運転停止前後を比較すると、2005年3月10日には172匹いたが、2011年2月7日と17日の計9匹を最後に、今冬は姿が見えない。 熱帯のソラスズメダイは長浜では確認できず、瀬崎には08年1月29日に2匹いたのみ。内浦湾では05年1月27日の21匹を最多として常時見られたが、12年1月18日に7匹、1基だけ稼動していた2月14日は1匹、停止後は0になった。 このほかの南方系の生物についても、毒ウニのガンガゼは棘が抜け落ちて死滅し、トラフナマコは衰弱が目立ち、ギンイソイワシも死骸が海底に沈んでいるのを確認した。 調査結果を定量化するため、記録した全魚種で北半球における南限と北限の平均値である分布中心緯度を求め、魚種数を縦軸に、同中心緯度を横軸に頻度分布を棒グラフで表示した。運転停止の2月20日前後を比べると、停止前にあった南方系を示す北緯18度~24度の魚種を示すグラフが、停止後にはまったく見られなくなり、顕著な変化を表している。 益田さんは「全ての原子炉が停止して、南方系の魚たちは減るだろうとある程度は予想していたが、衝撃的な海の光景だった。熱帯などの魚たちにとって冬場、11~12度の水温が生死の境目らしい。原発事故の影響に関心が集まりがちだが、温排水が恒常的に自然に与える局所的温暖化の影響も原発を考える判断材料にしてほしい」と話している。 7月のノルウェーで開かれる国際学会で発表する。
写真左=棘が抜け落ち弱ったガンガゼ(益田玲爾さん撮影)
写真右=内浦湾で冬季に記録した全魚種の分布中心緯度の頻度分布グラフ(益田さん作成)。2012年のデータは、高浜原発停止の前(a)と後(b)に分けて表示した。温排水の放水が止まった時期のbでは、南方系の魚が消えたことが分かる。
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