地道な取り組み積み重ね 草の根の友好広がる 浮島丸殉難者を追悼する会 訪韓して講演・茶道文化で交流【舞鶴】
投稿日時:2012年12月21日(金)
終戦直後に舞鶴湾で起きた浮島丸事件で亡くなった韓国・朝鮮人を追悼する舞鶴市民と韓国市民との交流が今秋、継続的に行われた。日本と韓国の両国間には竹島問題を巡ってギクシャクした関係ができたが、舞鶴市民たちによる事件を伝える長年の地道な取り組みが、韓国市民との友好の輪を結ぶことにつながっている。草の根の交流が静かに広がっている。 市民たちが現場近くの下佐波賀に碑を建立し、「浮島丸殉難者を追悼する会」が毎年追悼集会を開き、事件と戦争の歴史を語り継ぐ。集会には在日韓国・朝鮮人が一緒に参加するほか、韓国の舞踊家が鎮魂の舞を捧げるなど、関心を集めるようになってきた。 日清戦争の最中、朝鮮民衆が蜂起した東学党の乱の戦跡を巡るツアーが10月末にあり、日本から参加した24人の中に同会の余江勝彦会長(72)=白浜台=と事務局員の阪本みさ子さん(62)=市場=が訪韓。余江さんは光州市で集まった市民を前に事件と追悼運動について講演し、阪本さんが作成したハングル語版の事件の説明をまとめたDVDを配布した。 余江さんは「来場した女性から『韓国人の私たちもこの事件を知らなかった。事件と追悼活動を決して忘れず伝えます』と感想をもらった。多くの韓国人は大統領の竹島上陸を批判し、冷静に日本人との関係づくりを考えています」と話す。 11月には、今夏の集会で献茶をした京都市東山区在住の韓国茶道協会京都支部長のユン・ドウシンさんが、余江さん宅で日韓茶道交流会を開いた。ユンさんは韓国茶道の歴史や作法を説明、持参した茶道具を使ってお点前を披露して、市民11人が韓国の抹茶と茶菓子を味わった。 ユンさんは「長年追悼を続ける舞鶴の皆さんに感謝の気持ちを表そうと、茶会を催しました」と述べた。民族衣装も体験した仲野久美子さん=溝尻=は「茶の作法は日本と韓国で似ているところもあると感じました。お抹茶は淡い色でとてもおいしく、心と心の交流ができよかったです」と話していた。 また、先月、韓国の国会議員であるイ・ミョンス氏が来鶴、殉難の碑に献花した。イ氏は余江さんに追悼に対する感謝の言葉を伝え、「韓日の友好のため現場を知ろうと来ました。歴史的な事実を直視して後世に伝えることが大切」と語った。
※浮島丸事件とは・・・青森県下北半島で鉄道建設工事などに従事させられていた朝鮮人労働者と家族らが、大湊港から海軍特設輸送艦「浮島丸」に乗船し、朝鮮半島に帰国途中の1945年8月24日、寄港した舞鶴湾内で謎の爆沈をし、乗員乗客合わせて549人が亡くなった。
写真左=韓国光州市民と話す余江さん(左)
写真中=舞鶴市民にお茶を点てる韓国茶道家のユンさん(右)
写真右=余江さん(左)から事件の説明を受けるイ議員(右)
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