抑留の記憶 水彩画で伝える ロシア人とのふれあいユーモラスに 木内さん、引揚記念館に寄贈【舞鶴】
投稿日時:2013年02月26日(火)
漫画川柳作家の木内信夫さん(89)=千葉県柏市=が自らのシベリア抑留体験を描いた水彩画(A5判)66点が、平の引揚記念館に寄贈された。収容所で日本兵とロシア兵が相撲をとる様子など、過酷な抑留生活だけではなかった、現地の人たちとの人間らしいふれあいの日々が、ユーモラスなタッチで描かれている。
旧満州で陸軍航空隊兵だったが、ウクライナのスラビヤンスク収容所で抑留生活を送り、れんが作り工場、建物の解体などの作業をし、1948年に舞鶴港に引き揚げた。
帰国後、元々好きだった絵で息子たちに抑留体験を伝えようと、水彩画に描くようになった。抑留中に見たものは色から表情までを覚えている。抜群の記憶を活かし、劇団四季の公演「異国の丘」で舞台衣装の時代考証を担当した。
また、長男の正人さん(49)=同=は父の絵と体験を広く発信しようと、1996年からホームページで「旧ソ連抑留画集」として公開している。同年には水彩画40点を同記念館に寄贈した。
昨年同館の企画展で木内さんの絵が展示され、来館時に引き揚げ資料をユネスコの記憶遺産に登録する舞鶴市の取り組みを知って協力しようと、正人さんが水彩画の寄贈を申し出て、2人は同館を訪れ馬場俊一副市長に手渡した。
工場で知り合った身長2メートルのロシア兵の肩に乗る日本兵、同じく抑留中のドイツ兵と楽器演奏を楽しむ様子、ヒマワリ畑で羊を追うロシアの少女、現地の女性から草刈を習って作業をする日本兵など、餓死や凍死に脅かされた抑留生活とは異なる日常を明るい眼差しでとらえている。
木内さんは「つらいことばかりではなく楽しい思い出もたくさんあった。いまでも思い出して描けることはたくさんある。抑留の記憶を伝えることができ、天国の戦友に犬死じゃなかったといいたい」と話している。同館は木内さんの絵を公開する企画を検討する。
写真=「楽しい思い出もたくさんある」と話す木内さんと長男の正人さん
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