万葉集 話し言葉で解説 東高出身の稲田さん(福岡県糸島市) 入門書を出版 古代人の心、いまも生き生きと【舞鶴】
投稿日時:2013年12月17日(火)
東舞鶴高校出身で、万葉研究家の稲田宰(つかさ)さん(73)=福岡県糸島市=がこのほど、万葉集を話し口調でわかりやすく解説した入門書「万葉の愛をたずねて 蘇る犬養万葉のこころ」(文芸社)を執筆し出版した。夫婦や恋人、防人などの愛の歌132首を取り上げ、そこに込められた古代の人たちの心がいまでも共感を呼び、忘れられた大切なことを伝えている。
万葉集は約1300年前の629年~759年に作られ、現存する日本最古の歌集。全部で20巻、4516首あり、夫婦の情愛、死を悼み、別れを悲しむなどの心を詠んだ。原本はなく写本のみが残る。歴史学や地理学などの学術の貴重な資料でもある。
1959年東高卒業後、進学した大阪大学薬学部の教養課程の授業で、万葉学者として著名な国文学教授の犬養孝さんのわかりやすい講義を受け、いまも人の心に響く万葉集の魅力を教えられ、在学中、犬養さんの萬葉旅行の会に入って歌が詠まれた地を訪ね、万葉ファンになった。
薬剤師だったサラリーマン時代は転勤が多く、研究に費やす時間は減ったが、定年間近の92年に筑紫萬葉旅行の会を主宰し、九州各地や奈良など故地を案内。これまで183回開催し、約6000人が参加した。最後の勤務地が福岡で、故地の糸島半島のまちに居を構えた。
さまざまな場で講師に招かれ、多くの教えを受けた犬養さんの研究を咀嚼し、自分の言葉で講義を重ねてきた。犬養さんの没後15年を機に、その遺志と万葉人の心を知ってほしいと、今作の執筆をした。
本は四六版、196ページ。親しみやすい本とするため、自ら講演や旅行で話してきた内容を話し言葉で記した。「信濃なる 千曲の川の 細石(さざれし)も 君し踏みてば 玉と拾はむ」などお気に入りの東歌、防人の歌、女流歌人の歌などを紹介し、解説をつけた。また、日本人の自然観や防人の歌への誤解などの豆知識も掲載している。
稲田さんは「万葉の人たちの心には、いまでも通じる素晴らしさがあります。わかりやすく説明し万葉集の世界を広めた犬養先生にならい、気軽に読んでもらえるような本にしました」と話す。1冊1,260円。なみえらぽーる店などで販売中。
写真左=講演する稲田宰さん
写真右=文芸社から出版した著書
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