原発災害時の避難計画住民説明会
投稿日時:2016年07月05日(火)
5月11日~6月8日の間、舞鶴市は原子力災害時の避難者の受け入れ先の施設名を加えるなどを追加し平成28年3月29日に改定した避難計画について東地区、大浦地区、中地区、西地区、加佐地区の市内5地区で市と府の防災担当者が説明を行う住民説明会を開いた。舞鶴市はほぼ全域が関西電力高浜原発の30キロ圏となり、京都府の広域避難計画がまとまったことを受け、風向きなどの条件により府南部か他府県に広域避難する方針や避難先である施設名の明記のほか、障がい者、高齢者などの要配慮者の避難の流れ、安定ヨウ素剤の取り扱い・配布方法などの説明が行われた。参加者からは5キロ圏周辺に限定している安定ヨウ素剤の事前配布を全市に広げるべきだとの意見や、避難ルートの渋滞箇所についてシミュレーションを行っているのかなどの質問が出され、計画内容と現場で生活する人たちが知る情報との温度差が浮き彫りとなった。5回の説明会参加者数は延べ約300人ほどで、これでは市民に周知できたかとは言い難い。おそらく説明会の開催自体を知らなかった市民もいるのではないだろうか。舞鶴市民新聞では参加者にアンケートを取り、説明会のあり方を問いたい。アンケートの結果では「説明会を理解できたか?」の問いに対して8割以上が「いいえ」と回答。「不安は取り除かれたか?」の問いに対しては9割が「いいえ」と答えた。データを見る限りでは、伝えたつもりになっているかもしれないが市民には伝わっていない。原子力災害時に対して、絶対に安全な手段は住民にも行政にもわからない。誰にもわからないのだ。予測できないことの連続だろう。市民一人一人が防災意識を強く持ち、自分の納得できる避難計画を立てる必要が求められるなか、わからない行政側から一方的に説明を行う方法がそもそも合ってはいないのではないだろうか。地域の学校や消防団など小さく分けたグループで地域情報を共有し意見を出し合う、「災害」という命が係わる問題だからこそ、一緒に議論する場が必要ではないだろうか。
標的にされやすい行政がサンドバックにされてしまうのは目に見えているが、果たして行政だけの責任にしてしまっていいのだろうか?どれぐらいの住民が「原発問題」、「防災」に関心を持っていたのか。「誰かがやればいい」と思ってしまっていなかっただろうか。広報不足とも取れるが参加人数の数字が関心度の低さを物語っている。
現状を見る限り、行政側はパフォーマンスではなく住民と本音で意見交換をする姿勢、住民側は人任せにせず関心を持つこと、この2つの意識がないと、おそらく話は進まないだろう。住民説明会を担当した市企画管理部危機管理室の森川芳博室長兼危機管理・防災課長(56)に話を聞いた。アンケート結果に対し「説明の仕方が悪かったかもしれない」と話し「説明会については関心のある方を中心に説明できたこと、新聞報道等により一定の成果はあった」としながら「この避難計画は市民全員の避難を想定しており、国の指針を基に作成している。府や関電とも協力体制をとっているがやはり舞鶴市が中心になって考えなければならないと思う」と述べた。一方で現段階ではやはり説明が不十分と話し「物理的にすべての自治会を回るのは難しい。渋滞問題など計画の判断材料が予測である以上、自治会を中心とした住民側にお願いする以外にない。そのためにも住民の皆さんの意見を聞きながらしっかりと改正していき、自治防災の意識を高めていきたい」と語った。市では引き続き出前授業や相談を行い、7月には自治会長の集いなどで説明会、8月には内閣府も参加するスクリーニング等の除染訓練も行う予定としている。加佐地区で行われた説明会では一人の男性が「できているように見せなければいけない行政も大変だと思うが「できていない」と素直に言ってほしい」と言っていた。東日本大震災では「安全」だと言いつづけたことが最悪のシナリオとなってしまった。市民も行政も誰も愛するふるさとを失いたくない。我が街が同じ過ちを繰り返さないことを祈るばかりだ。
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