【暑中号】押し寄せる竹を宝へ
投稿日時:2016年07月22日(金)
「放置竹林」という言葉をご存じだろうか。放置竹林は竹材の需要が減少するなかで経済的に成立しなくなり、竹林が管理されなくなった結果、生態系の単純化や崖崩れが起きやすくなるなど、様々な害を引き起こすことから現在問題視されている。放置竹林の面積は舞鶴市内に約1351ヘクタール、福知山市に約600ヘクタール、綾部市に約300ヘクタールとなっており、舞鶴市にいたっては府内の25%を占め、最も面積が多い。竹は生長が速く年間7%ずつ面積が増えるとも言われており、竹が民有地に迫ってきたという相談もある。まさに竹が押し寄せているのだ。そんな竹問題に立ち向かうチームがいる。市内山林で増え続ける竹林の活用を進める「まいづる竹林整備・竹活用ネットワーク協議会」(川勝邦夫会長)だ。9団体と市民24人の計67人で、2014年に同協議会を設立した。「PR」、「竹林整備」、「研究開発」の3つの分科会で構成され、白屋地区の竹林整備、竹を粉砕するチッパー機を購入し、金剛院の竹林をモデル地区に整備。竹を活用したイベント等を開催し、その活動は多岐にわたる。2016年1月、同協議会の研究開発分科会が動いた。竹を消費するのに一番効果的とされる農業分野での利用を図ろうと、竹を使った堆肥づくりや土の研究などに取り組み始めた。「土質を上げるのに竹が活用できれば農薬を極力減らし、コスト削減にもつながる」そう考えた同分科会は日々、農業業関係者たちと意見交換を行い、農業に活用できるニーズを探った。様々なアイデアが飛び交うなかで、竹を粉砕したパウダーやチップを発酵させたものが農作物の栽培に利用されていることに着目し、実験を始めた。市販の発酵竹パウダーの配合を0・1~10%の比率にしたものを使い、小松菜などを栽培したところ、0・1%で一番成長が良く、成長促進やえぐ味がないなど植物の生育に良い影響を与えることがわかった。更なる実験データを求め、現在は水間地区に農場を借り、万願寺甘とうやトウモロコシ、サツマイモなどの栽培にあたり、竹パウダー、鶏糞、大豆カスなどの配合比率を少しづつ変えながら生育状況を比べている。同分科会担当理事の島村秀樹さん(44)は「農作物によって差はあるが、平均的に2割増し程度の成長データが出ている。面白い結果が出ています」と話している。また農場にはひときわ目立つ竹製のグリーントンネルと直径3mのグリーンドームが立ち並ぶ。ここでは甜瓜(まくわうり)や小玉スイカなどツル科のものが育てられ、ツルが巻き付くことで緑に覆われたトンネルとドームができあがる。この方法には様々なメリットがあり、「内側に作物が育つため獣害被害に遭いにくい」、「竹製のためCo2が出にくい」、「土に還る」など竹の特性を存分に活かした仕掛けが施されている。現在は栽培実験のほか耐久チェック等を行っており、島村さんは「独特なフォルムを活かした観光コンテンツとして使いたい」と夢を語った。「ここまでこれたことが奇跡です」そう語る島村さんは関わった地域の人々に感謝の言葉を口にしながら、栽培実験に勤しんだ。竹を「宝」に変えるかもしれない大実験。吉報が待たれる。
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