忘れてはいけない引揚の歴史−世界記憶遺産登録一周年フォーラム
投稿日時:2016年10月18日(火)
浜の舞鶴商工観光センターで15日、舞鶴引揚記念館に収蔵するシベリア抑留と引き揚げ関係資料「舞鶴への生還 1945~1956 シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録』がユネスコ世界記憶遺産への登録が決定して10月で1年となることから、記念フォーラムが開かれた。同月は1周年の「記念月間」とし、2日から来年1月15日までの期間、日本に5件ある世界記憶遺産に登録されている資料33点を一堂に紹介する特別企画展や、16日には世界記憶遺産の保存と活用を考えるミュージアムトークといった引揚の歴史を紡ぐ様々な企画が同館で催された。また13日には、1988年4月の開館から約28年半、入館者数が400万人に達し、まさに記念月間にふさわしい節目の月となった。「感無量です。1年経ち、引揚の輪はさらに大きく広がりました」と思いを語った同館の山下美晴館長は「皆さんの引揚に対する思いを受け、改めて頑張らなければいけないという思いになりました」と決意を固めた。フォーラムでは基調講演として日本ユネスコ国内委員会「世界の記憶」選考委員会委員で東北大学の芳賀満教授と舞鶴市ユネスコ世界記憶遺産有識者会議会長で東京女子大学の黒沢文貴教授の2人が世界記憶遺産の意義と今後への期待を語った。また東舞鶴高校ESS部の5人が、抑留者とともに収容所で数年間過ごし、共に帰国した「クロ」の逸話を紹介する紙芝居「シベリアからやって来たクロ」を日本語で録音したVTRを流した後、生徒たちが英訳した内容をステージ上で朗読、集まった330人の観客にメッセージを届けた。同校3年生で部長の森本和樹さん(17)は「(国内だけでなく世界にも)より多くの人に知ってもらえる良い機会だと思います。過酷な環境で長い間働かされる。(そういった歴史が)あったことを一番伝えたかった」と語った。フォーラムの最後には、まいづる児童合唱団とHarmony for MAIZURU舞鶴中高生合同合唱団が、舞鶴市のイメージソング「My hometown 舞鶴~このタカラモノを未来へ~」や音楽劇「君よ生きて」から「メッセージ」を披露。心のこもった歌声は観客の涙を誘った。同合唱団の坪倉未帆さん(18)は「技術的なことだけでなく、どうすればたくさんの人の心に届くかを考え練習しました。将来は音楽の先生になって、この活動を引き継いでいきたいです」と語った。「100年後、150年後、僕たちが未来に何を残せるか?」「君よ生きて」を手掛けた望月龍平氏が語った言葉。決して忘れてはいけない引揚の歴史。体験した者、語り継ぐ者、たくさんの思いの結晶は様々な形に姿を変え、未来へ引き継がれている。
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