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支え合いの精神 手話に昇華

支え合いの精神 手話に昇華

投稿日時:2017年08月29日(火)

【市民の関心高く定員の1.5倍強の応募】

 手話を学ぶ入り口となる「手話奉仕員養成講座入門課程」が25日に全日程を終えた。修了証書を交付された36人は、お互いに講座の修了を喜び合った。手や身体、表情で表現し、目で見て理解する「手話」。今年は30人定員に47人の応募があり、急きょ39人に増員しての開講だった。近年全国的にも認知が高まっている「手話」の一端を取材した。

 同講座は毎年開催され、5月から8月までの3ヵ月間に全14講座を学ぶ。午後7時から同9時まで余部下の身体障害者センターで行われた。前半約45分が講義にあてられ、後半をは実技。講義では市聴覚言語障害者支援センター(以下、聴言センター)の職員や、聾学校舞鶴分校の教諭などを講師に招き聴覚障害を持つ人の聞こえ方や障害の種類などを学んだり、聴覚障害者から、日常の生活の工夫や、幼少時からの苦労や辛さなど、生の声を聞きながら学びを進めた。実技指導では、講師全員が聴覚障害者。「自己紹介」「家族の紹介」「趣味」「自分の仕事」など基本的な会話を学ぶ。質問は全て身振りや筆談で伝えなければならず、「伝える難しさ」も参加者は学んだ。参加者は福祉施設の職員や公務員、会社員、学生、主婦など様々だ。西山弥未(ひろみ)さん(28)はハローワーク舞鶴で障害者雇用に関わる業務に携わる。聴覚障害を持つ男性の就職支援に関わったことをきっかけに受講した。「今まで手話通訳者や聾学校の先生を通じて相談者と会話をしていたが、自分が使えたらもっとスムーズに支援が出来ると思った」と受講の動機を話す。日常の簡単な手話ができるようになった今、通訳者無しで会話のやり取りをして相談者に喜ばれた経験を語った。「聴覚障害を持つ方の就職は厳しいのが現実。学んだことを活かし、今後もどんどん仕事に役立てたい」と力強く話した。聴言センターの真鍋敏弘係長は「手話を学んで、それを手段として何が出来るか、そこが重要。講座が進むにつれて、みなさん聴覚障害者の立場に立って考えるようになったのがとても分かった」と話した。入門講座修了者は10月から始まる基礎講座へ進むことができる。市内では、毎年およそ半数が基礎講座へ進むという。また、手話サークル「つたの会」へ入会し聴覚障害者との交流や、ボランティア活動に携わる者もいる。

【条例制定へ機運高まる】

 全国では、手話を「言語」として普及させるための「手話言語条例」の制定が広がっている。2013年に鳥取県で初めて制定されて以来広がった。全日本ろうあ連盟によると、今年8月1日現在で、13県、79市、9町、計101自治体で制定されている。府内でも京都市、城陽市、向日市で制定。京都市では制定以来、手話を学ぶ機会の確保や理解の普及、手話通訳者の確保や養成の拡充などに取り組んでいる。当地でも関係者を中心にこうした課題に向けての声が上がっている。聴言センター真鍋係長は「当事者らや関係団体がひとつにまとまって、行政、社会に状況を訴えていくことが必要」と話す。聴覚障害をもち、主任講師として講座に携わった市村由希子さん(37)も条例の制定に期待する。「多くの人に聴覚障害者のことを理解して欲しい」と思いを述べた。北部で唯一、聾学校のある当地。条例制定に向けた動きに今後も注目していきたい。
 (井上 務)

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