「丹後の海」から見える 舞鶴の明日
投稿日時:2018年04月06日(金)
京都府立大学は18日、地域貢献型特別研究(ACTR:アクター)の平成29年度成果報告会を、舞鶴市政記念館ホールで行った。同大の研究者が中心となり、具体的な地域課題に応じて、産業・文化の振興に役立てられるよう調査・研究成果を、地域に還元、蓄積していくことを目指している研究活動で、府内各地の自治体、地域団体などと協働して平成16年から取り組んでいる。この日、午前は勝山享准教授による、自治会というものの歴史を通じて市民と役所のよりよい関係を探る報告が、また午後からは、藤本仁文准教授をコーディネーターに、地元の有識者も交えて、「海」からの様々な観点から、舞鶴という地域の歴史を多角的に再考する発表とシンポジウムが行われた。市郷土資料館(ふるさと発見館)の学芸員・小室智子さんは「幕末~明治中期における丹後中近海航路」と題し講演。北部地域から出てくる「船主」の史料は、「江戸期に活躍した北前船」のイメージをつくった通説とは、異なる視点をもたらすと説明した。さらにシンポジウムでは船主史料のデータベース化から見えてくるものや、地理的条件に合致するだけで人為的に立ち上げられた「軍港都市」という新舞鶴(現・東舞鶴)の特異性から、北前船は若狭湾域においては明治中期になって盛んだった可能性がでてくる、といった興味深い内容が議論された。これまで環境学や生命科学といった学際的な基礎科学の農林業、伝統産業などへの応用研究が主だったが、今年度の舞鶴での研究のように近年は、民生や観光施策に役立てられる文化史的なアプローチをとる取り組みにも対象が広がっている。同大と当地の連携が将来の舞鶴の可能性を拓くことに期待が高まる。
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