「時代の変化」と廻船
投稿日時:2018年10月02日(火)
舞鶴地方史研究会が、このほど9月の例会を開いた。郷土資料館・学芸員の小室智子さんが舞鶴の廻船を題材とした研究発表をした。同研究会では、毎月例会を開き、会員や外部講師が地方史に関する様々な研究発表をしている。9月は会員でもある小室さんが発表。「舞鶴近海海運から見た江戸時代と明治時代」と題し、江戸から明治時代にかけた舞鶴近海の海運形態の変化を、市内の古文書を通して発表した。小室さんは、江戸時代の海運関係史料から、田辺藩と小浜商人との結びつきの深さを強調。荷主から委託された荷を運ぶ「賃積」として、田辺藩の御用で小浜へ送った物資の割合は大きく、若狭湾をまたぐ経済圏があったと説明した。一方、明治維新後、貨幣改革により徐々に「両」から「円」へ移行。明治7年の各船頭の「仕切り書」や「庄屋御用帳」には、両と円の両方が使われていたり、米と銭貨の両方が税金として支払われていた記録を紹介した。そして、藩が一括して小浜へ運んでいた米を民間人が自分で売って税金を納める時代に移ったと説明。海運に携わる貿易会社も藩の管轄から半官半民的な商会所を経て、商人独自の会社へ移行。船主や船頭が買い付けた荷物を運ぶ「買積」へ比重が大きくなっていったのではと説明した。また、活動拠点も由良から神崎・田辺へと流れが変わっていった可能性を示す史料を紹介。鎮守府設置の決定を受けて、小浜や宮津に比べて舞鶴が消費地になっていったと説明した。小室さんは「近海航路の文書は残りにくいが、舞鶴をはじめ地方に眠る文書を海からの視点で見直すことで、新たな歴史が見えて来る可能性がある。もし、家庭に古い文書などがあるなら、捨てずに連絡して欲しい」と話した。
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