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環境保全のモデルケースに~大浦半島を舞台にエコツアー

環境保全のモデルケースに~大浦半島を舞台にエコツアー

投稿日時:2019年09月13日(金)

 島全体が国の天然記念物に指定されている冠島でこのほど、大阪商業大原田ゼミの学生たちが漂着ゴミの流出地調査を実施した。2日間に渡った調査で一行は、野原海岸でも同様の調査を行った。調査結果は同ゼミを通じて学会に報告され、漂着ゴミの統計に役立てられる。

 海洋ゴミによる環境汚染は全世界的に大きな問題となっており、当地でも舞鶴クリーンキャンペーン実行委によるビーチコーミングなど、啓発活動も継続的に行われている。しかし、日々の生活の中でこうしたゴミ問題は現実感に乏しく、便利さの優先から抜け出せない状況が続いている。一行が集めたゴミは全体のほんの一部に過ぎないが、冠島では合計820本のペットボトルを収集。2日目の野原海岸では、615本を収集した。参加した同ゼミ所属の酒井寛生さん(20)はゴミの多さに愕然としながらも、「一人ひとりの意識向上が大事。自分としてもゴミを出さない工夫をしていきたい」と決意を述べた。学生たちを驚かせたのは、ゴミの量だけではない。持ち帰ったペットボトルを流出地で分けると、冠島で収集した820本では、中国が282本、次いで日本252本、韓国203本という結果に。野原海岸で収集した615本は、実に半数を超える352本が日本のものという結果になった。参加した野口ひよりさん(19)は、「簡単に捨てる人が多すぎる。便利さより環境を優先できる社会にならないと」と話した。
以前にこうした調査が同様に行われた石川県羽咋市では、日本製が21%に留まっていたという。その理由として、調査を率いる同大学の原田禎夫准教授は、「野原海岸が若狭湾口に位置し、府北部で最も大きな流域面積と流域人口(約30万人)を抱える由良川が冠島の南西側で若狭湾に流入していることが考えられる」とし、流域に暮らす市民の意識向上が問題解決に不可欠と話した。

【社会問題に 仕組みで立ち向かう】

 野原地区と三浜地区の漁師らで組織する「おおうら海の農ネットワーク」の松田弘幸会長は、「漁具などが浜に散乱する光景は昔から馴染みがあったが、ここ数年はすごい勢いでペットボトルなどの漂着ゴミが増えている」と話し、地元漁業者だけではどうすることもできない現状を憂慮していた。そこで始めた取り組みが、舞鶴DMCセンター(矢野康徳代表理事)が手がけるCSRエコツアーだった。CSRとは、企業の社会的責任を意味する。近年、企業は利益の追求に終始することなく、いかに社会に貢献しているかという姿勢が問われる世情となっている。そうした企業や団体をボランティアとして現地に受け入れ、清掃活動をしてもらうことで、継続的な清掃が可能になるとともに、現地での宿泊や食事などの需要も生まれる。矢野さんは、「漁場の環境保全CSR型観光」こそ、地域の抱える様々な問題を解決する糸口になると力を込める。漁場の環境悪化に頭を抱える漁村は数多ある。大浦でのこうした動きがひとつのモデルケースになれるか。今後の展開に注目したい。

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